ビジネス

傾斜マンション騒動 湾岸タワーに飛び火していく可能性も

マンションには多くの報道陣が押し寄せて物物しい警備態勢に

 三井不動産グループである三井不動産レジデンシャル(ほか1社)が2006年に分譲したマンション、「パークシティLaLa横浜」のいわゆる「傾き」問題が大きな話題となっている。

 現在、詳しい原因究明や補償・建て替えも視野に入れた協議が続けられているが、施工を請け負った旭化成建材による杭工事の“データ偽装”が次々と発覚。業界最大手が犯した過ちの代償は計り知れない。

『2020年マンション大崩壊』などの著書がある不動産コンサルタントの牧野知弘氏(オラガHSC代表)が、問題が起きた背景と今後の影響について解説する。

 * * *
 今回のマンションと同じ横浜市内では、住友不動産が分譲した「パークスクエア三ツ沢公園」でも施工ミスによる建物の傾きが話題となったが、今回は建物の規模、杭打ちの際の施工側の「データ偽装」の疑いなどの問題を含め、社会に及ぼした影響ははるかに大きなものとなっている。

 マンション分譲事業は「利幅の薄い」ビジネスである。デベロッパーにとって一棟のマンションを分譲しても純利益は5%から10%程度。したがって少しでも利益を捻出しようと建設費を極限まで圧縮するために徹底したコスト管理を行う。

 コスト削減要求を受けたゼネコンは、下請け業者にその負担をかぶせるという構造にある。そんな中で生じたのが今回の事件かもしれない。特に本建物が建築された2006年から2007年、ゼネコンは受注が少なく、「利幅の薄い」マンション事業でも受注せざるをえない環境にあったと思われる。

 建物構造に直結する「杭打ち」は通常は定められたボーリング調査を行うことで正確に支持層に杭を打ち込むことができるはずだ。データの偽装をしたとすれば、この「極限までのコストの切り詰め」によるものと考えざるを得ない。データ偽装に関して、デベロッパーがすべてをチェックすることには限界があるが、ゼネコンは確認できたはずである。コスト削減のプレッシャーの中でスルーしてしまった可能性がある。

 また今回の事件で問われているのが、住民からの疑問、質問に対してどのような対応を行ってきたかという点だ。

 報道等によれば、一年以上前から一部の住民より「傾いているのではないか」という指摘があったという。これに対して、会社として真摯に向かい合う姿勢が本当にあったのかどうかも疑問とするところだ。

 もちろん住民からの問い合わせやクレームには様々な種類のものがある。住宅がクレーム産業などと言われる所以だ。住民からの問い合わせすべてに満足する対応を行うことには限界があるが、今回の事態を招く一因には、大企業などに多くみられる「事なかれ主義」あるいは「問題先送り」といった体質があったのかもしれない。

 施工をした三井住友建設は施工ミスを認め、杭打ちを行った旭化成建材はデータ偽装の可能性も含め、同社が行った約3000か所にのぼるすべての物件で調査をかけると発表した。

 また、三井不動産レジデンシャルは「全棟建替え」も視野に住民との話し合いに入ると宣言した。ゼネコンは建築基準法違反を厳しく問われることになるし、デベロッパーは売主責任を免れるものではない。ようやく対応がスタートしたといえる。

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン