ビジネス

就活シーズン見直し論議「損したのは政府や経済団体」と識者 

 今年度実施された就職活動の時期について、早くも見直し論が出ている。就活議論で損をしたのは誰なのか。千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏が解説する。

 * * *
 就活時期の再度見直し論が盛り上がっています。この件で、いったい誰が得をし、誰が損をするのでしょうか?

 2016年度、現在の大学4年生の代から就活時期の繰り下げが行われ、結果として混乱したことを受けて、経団連の榊原会長は、9月7日の会見で「見直しもあり得る」ことを示唆しました。そして、ついに10月27日の会見で2017年春入学の大学生について、選考開始を今年度の8月から前倒しにすることを表明しました。会見の中では6月解禁にするのも選択肢の一つであるとし、前倒しの可能性が極めて高くなりました。

 また、同日、加藤1億総活躍担当相は、2016年度の就活時期繰り下げについて、実態を検証するための経済界や大学を含めた実務者会合を11月4日に開くと発表しました。就活時期の再度見直しが急ピッチで進んでいます。

 何度もこのコラムでも紹介してきましたが、今一度整理してみましょう。

 2016年度の就活時期は、1.就活時期の繰り下げ(採用広報活動開始が大学3年の12月から3月に、採用選考活動開始が大学4年の4月から8月に)が行われた 2.ゆえに、採用広報活動期間が4ヶ月から5ヶ月に1ヶ月増えた 3.同様に選考開始から卒業までの期間は12ヶ月から7ヶ月に短縮された ということになります。あくまで、このルールどおりに行われた場合ということですね。

 実際は、中堅・中小企業を中心に早期に内定を出す企業が続出したこと、大手は早期にアプローチしつつも内定出しは8月1日以降にしたこと、実質選考期間が1ヶ月増えてしまったことなどにより、ルールは守られない上、混乱し、さらには実質、就活終了までが長期化してしまったことが問題となりました。内定者を根こそぎひっくり返された企業も現れたわけですね。

 このような、混乱が起こったことから、早期に対応しようとする動きは評価できるともいえますが、いったん就活時期繰下げの大義名分はどこにいってしまったのかというのが、いまさら意地悪なようですが率直な感想です。

 この件によって、損するのは誰でしょうか? 私は政府や経済団体だと思っています。彼らの信頼度が、激しく落ちるのではないか、と。そして、今後、この手の見直し論があっても、もう相手にされないのではないかと。

 就活時期に関してはどの時代においても(今年ほど大胆にルールが破られた年は珍しいものの)、何らかのフライングはあるわけです。学生も企業も、「◯◯業界はもうリクルーター面談が始まったぞ」「◯◯社は、上位校を中心に内定を出しはじめる時期だぞ」などという、水面下の情報をもとに駆け引きするものです。そして、全体のスケジュールが、ある程度のガイドラインになり、それに従って(ルールを守らないにしろ、参考にしつつ)動くわけです。

 いま、企業や就職情報会社で行われている動きはといえば、6月スタートになった場合の施策のチューニングです。媒体の活用法、説明会や選考の開始時期や方法を見直すわけです。もっとも、見直しもあり得る件は昨年から噂はされておりましたし、6月スタート説は今年の夏くらいからやはりまことしやかに囁かれていました。

 経団連が就活時期繰下げに関する政府からの要請を受け入れたのも「一度、受け入れてあげた、実験させてあげた」という見方もできるわけです。経団連は、この件を検討した若者・女性活躍フォーラムでも、繰り下げに反対していましたからね。

関連キーワード

トピックス

前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト