11月4日に開かれたホンダの中間決算の発表は、業績よりもタカタ問題に質問が集中する異例の会見となった。
その場でホンダの副社長執行役員の岩村哲夫氏は、タカタがエアバッグ部品のテストデータを誤って報告していた事実を掴んだと説明したうえで、「今後、タカタ製のインフレーター(エアバッグを膨らませる装置)は使わない」と断言した。また、ホンダが所有するタカタ株についても、「一般的に言って、取引の大きさを考慮しながら保有するもの」として、資本関係の見直しすら匂わせる発言をした。
「ホンダの対応はあまりにもドライではないか」(業界関係者)との声も聞こえてくるが、その裏には「焦りもある」と推測するのは、前出の福田氏だ。
「ホンダは、今後どこまで拡大するか分からないリコール費用を多く負担するだけの財務的な余裕がないうえに、相次ぐ新車投入で販売台数を盛り返してきた北米市場でイメージを悪くしたくない。ただでさえ、米国でエアバッグとは関係ない『フィット』のリコールも出したばかりなので、これ以上の痛手は被りたくないというのが本音でしょう」
そんなホンダが“タカタ離れ”を宣言したことによって、他メーカーも相次いで距離を置き始めた。11月2日に静岡県でタカタ製エアバッグを搭載した『エクストレイル』で軽傷事故が起きた日産自動車や三菱自動車なども取引中止を検討している。
このまま孤立無援になりそうなタカタは、果たしてこの先も会社を存続できるのか。
「エアバッグはどれだけ品質改良をしても取引先が減れば事業として成り立たない。残るシートベルトやチャイルドシートの製造で細々と経営を続けていくしかないが、大きく傷ついたブランドを立て直すためには、日本の自動車メーカーの協力と理解が不可欠。
典型的なオーナー企業であるタカタは、重久会長の母親で“女帝”ぶりを発揮する高田暁子・特別顧問の意向が経営方針を大きく左右するといわれている。複雑な『お家事情』が今後の交渉のしがらみになれば、いよいよ誰も手を差し伸べなくなるだろう」(業界関係者)
しかし、曲がりなりにも80年以上にわたって日本車を支え、世界的な部品メーカーに上りつめたタカタ。それだけに、横並びで関係を断ち切ることだけがリスク回避の最善策なのか。供給元の完成車メーカーは自らの責任も含め、改めて問い直してみる必要があるかもしれない。