独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル車の排ガス不正問題が米国を皮切りに世界中で非難を浴びているが、日本メーカーも“タカタショック”で大きく信用を失う事態に発展している。
自動車事故から身を守るはずのタカタ製エアバッグの異常破損で、少なくても7人の死亡事故に繋がったと警告していた米当局(高速道路交通安全局=NHTSA)は11月3日、リコール(回収・無償修理)の報告を怠ったとして、タカタに最大2億ドル(約242億円)の制裁金を科すと発表した。
すでにリコール対象になった車は、ホンダ、トヨタ、日産など日本車だけでなく、米ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)、独BMWほか全世界で合計3000万台規模にまで膨らんでいる模様だ。
市場関係者によれば、「リコールに関連する費用は3000億~5000億円」と見積もられている。純資産が1500億円程度のタカタにとって、あっという間に経営難に陥ってしまう額だ。「このまま経営を続けるのは難しい」(同)との厳しい指摘も出る中、高田重久・タカタ会長兼社長は会見で、外注部品を束ねるモジュールメーカーとしての生き残り案も口にした。
だが、日本メーカーはそんな窮地のタカタを救うどころか、「絶縁」の方向に舵を切り出した。特に、昨年販売した新車の4分の1にタカタ製エアバッグを搭載した“蜜月”のホンダが見限ったことで、業界内には大きな衝撃が走った。
ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「ホンダとタカタは本田宗一郎氏が経営の指揮を執っていた時代からの付き合いで、1987年に発売したホンダの高級車『初代レジェンド』に国産初のエアバッグを搭載するなど、お互いに技術協力もする重要なパートナーでした。ホンダなくしてタカタもここまで成長できなかったでしょう。
だから、今回の大規模リコールが起きて以降、各社とも金銭的な救済策を含めたホンダの『意向』を注視していたのですが……結果的に見捨てる決断をしたようです」