「前作に比べると、“挑発的な編集”が多い。第1回ではフランス軍の慰安施設の映像をあえて入れ込んだりしていました。注目は第二次大戦を描く第3回です。海外の慰安施設に触れて視聴者を挑発したのだから、日本の慰安婦問題をどう描くのか。そこで今シリーズの真価が決まる」
やはり貴重な記録映像に多くの人の関心が集まっているわけだが、前出・大野氏はこう付け加える。
「かつてチャップリンは、『記録映像の中には毒が入っている』といいました。映像には当然、映す人や編集する人の“意図”があります。それが映像の毒です。記録映像ではなくフィクション作品で近未来に起きる事実に迫ったチャップリンは中立的だと思われがちな記録映像の危うさをよく分かっていた。
『新・映像の世紀』では、第一次世界大戦の引き金となったオーストリア皇太子暗殺(サラエボ事件)の部分でピストルのイメージ映像や銃撃音を重ねるなど、“過剰演出”がありました。分かりやすくするための加工です。すべての映像には、そうした様々な“意図”が含まれる。それを意識して見てこそ、『映像の世紀』を本当の意味で楽しめるのではないでしょうか」
※週刊ポスト2015年11月13日号