国内

認知症患者 家族は損害賠償を求められるリスクと隣り合わせ

 白い軽自動車がJR宮崎駅前の目抜き通りの歩道を700mも暴走し、最後は加速して歩行者6人をはね、2人が死亡した──。10月28日、73歳の認知症の男性が起こした「暴走事故」は高齢社会の恐怖を見せつけた。横転した車から引きずりだされた男性は「今どこにいるかわからない」と呟いたという。

「男性の自宅は現場から100kmも離れた鹿児島県日置市です。朝8時に家族に何も告げずに出発し、2時間半で行ける距離を7時間もかけて現場にたどり着いた。男性は普段から家族を乗せ運転していたそうです」(捜査関係者)

 周囲はどれだけそのリスクを認識していたのだろうか。75歳以上のドライバーが昨年起こした死亡事故471件のうち、認知症が疑われるケースは4割近くに上る(警察庁調べ)。

 交通事故だけではない。2013年に大阪府に住む老夫婦の自宅で起きた火災では、隣家も延焼。妻が郵便局に行っている間に、82歳で認知症の夫が新聞紙にライターで火をつけ、布団に投げたことが原因とされた。認知症介護研究・研修東京センターの長谷川和夫・名誉センター長が解説する。

「認知症で最も多いアルツハイマー型では、軽度ならば言葉の意味が通じにくくなる。中等度では自分のいる場所がわからなくなり、高度に進むと同居家族の顔がわからなくなってしまう。宮崎の男性はおそらく中等度。まだ家に着かない、と焦りながらアクセルを踏み続けたのではないか」

 認知症の本人に責任能力が認められない場合、被害者から家族が訴えられる例も少なくない。

 2007年には愛知県で91歳の男性が徘徊の末、線路内で列車にはねられ死亡した。妻と長男の妻が目を離した隙の出来事だったが、鉄道会社側が列車遅延の損害720万円を求めて遺族を訴えた。一、二審は「防止策を怠った過失」があるとして、妻と長男の賠償責任を認めた(双方が上告中)。

 介護する家族は、損害賠償を求められるリスクと常に隣り合わせということだ。

※週刊ポスト2015年11月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン