もともと『コウノドリ』は、出産経験のある全ての女性を軸に、出産願望のある女性や、恋人がいて妊娠の可能性がある女性も含む、幅広いターゲット層を狙った作品。濃い顔の男性は好き嫌いがはっきり分かれる一方、薄い顔の“塩顔男子”は幅広い層の女性から嫌われにくいので、作品のターゲット設定にピッタリ合うのです。
“塩顔男子”の俳優は、特定の色がつくことがないため、多くの作品に出演できますし、主役でも脇役でも輝くことができます。たとえば、夏ドラマの『民王』(テレビ朝日系)で総理大臣秘書役を演じていた高橋一生さん、秋ドラマでは『5→9』(フジテレビ系)にエリート商社マン役を演じている古川雄輝さんも典型的な“塩顔男子”ですし、今やトレンドの1つになりつつあるのではないでしょうか。
かつては、『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)で江口洋介さんが演じた「あんちゃん」、『踊る大捜査線』で織田裕二さんが演じた青島俊作など、濃い顔で濃いキャラのヒーローが目立ち、それぞれ“ハマリ役”と絶賛されました。しかし最近は薄い顔の俳優だけでなく、薄いキャラのヒーローも増えています。
その象徴的な存在は、『半沢直樹』(TBS系)のあとに『Dr.倫太郎』を演じた堺雅人さん。“熱く濃い男”という特定の色がつくことを懸念してか『半沢直樹』の続編ではなく、“クールな薄い男”の日野倫太郎を選びました。今後も“塩顔男子”俳優のさらなる台頭や、“クールな薄い男”のヒーローが増える気がします。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。