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兄弟間の借金 借用書を取り交わす意味や書き方を弁護士解説

 お金に困った時、お金を借りる相手として真っ先に浮かぶのは、親か兄弟姉妹だろう。しかし家族間でお金の貸し借りをすると、どうしても返済がうやむやになりがちだ。兄弟間でも借用書を取り交わすのは水臭いのだろうか。弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 弟が自動車を購入するため、私に100万円の借金を頼んできました。お金を貸すのは問題ないのですが、借用書をくれというと、水臭いといわれました。しかし、兄弟でも借用書を取り交わすのは当然だと思います。法的に通用する借用書を作成する場合、必ず明記しなければいけない事項は何ですか。

【回答】
 お金を貸すのに、借用書を書いてもらうことは法的に間違いではありません。兄弟間の貸し借りでも同じです。兄弟関係からは借用書を取り交わすのは水臭いと抵抗を感じるかもしれません。しかし、信頼が厚く裏切りがない関係でも、第三者が関与するようになると、困ったことになりかねません。

 例えば、弟さんが他からも借金して返せなくなり、財産を処分して債権者に分配せざるを得ない状況、極端なことをいえば、自己破産するような場合です。借用書がないと、他の債権者や破産管財人から、あなたの貸し付けを疑われ、分配を受けられなくなる可能性もあります。借用書は二人の間の証拠になるだけでなく、第三者との関係でも権利主張する上で大切です。

 借用書の急所は、貸したこと、金額と返済期限と返済方法(分割か一括か)が明確であることです。貸し主・借り主が連名で署名する形式が堅苦しければ、借用書として弟さんから、あなた宛に差し入れる形式で十分でしょう。

 横書きなら、借用書との表題の下、冒頭に、「×××殿」と借用書の宛て名、すなわち、あなたの名前を書き、行変えして、「本日100万円を確かに借り受けました」という記述をしてもらいます。これが眼目です。そして、「借金は、×年以内に完済します」とか「返済期日を平成××年×月×日とします」などと借用期間を明確にしてください。

 期限を決めないと、何時でも返済を請求できますが、時効という、放っておくと10年間で権利を失う制度の期間が貸し付けた当日からスタートするので、注意してください。借用書には、貸した日の日付けを書いて弟さんに署名押印してもらえば完成です。なお、分割支払いの場合は、途中の支払いをしないと、一括弁済になることも付記しておくことが必要です。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2015年12月18日号

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