服部勇馬は2年連続で2区を走っているが、かつて駒澤大の大八木監督からこう聞かされたことがある。
「2区を走れる選手は5区も走れる。2区は平地のスピードに加え権太坂の長いアップダウンがあり難しいが、5区にスピードはいらない。現役時代に2区も5区も区間賞を獲った私がいうのだから間違いない」
そして東洋大・酒井監督には2区から5区への配置換えの成功体験がある。2014年、それまでエースとして2区を走ってきた設楽啓太(現コニカミノルタ)を最終学年で5区に配した。設楽は区間賞、同年東洋大は総合優勝を果たしている。
2区から5区へのコンバートはエリートランナーが通った道だ。初代「山の神」として3年間5区を走った今井正人(順大卒、トヨタ自動車九州)も1年時は2区を走り、青学大の神野も2年で2区を好走した実績を買われての5区だった。
原監督が前回、神野の5区への配置換えを選択できたのは、2区の後任となる一色の成長が大きかった。今年の東洋大を見ると、前回の青学大と同じく2区を任せられるもう一人のエースが出てきた。それが勇馬の弟・服部弾馬(3年)だ。
これはもちろん仮説だ。しかし、そうやって想像、いや妄想を巡らせるからこそ箱根はどんどん楽しくなり、本番まで興奮で眠れない夜が続くことになる。
【プロフィール】西本武司(にしもとたけし):1971年福岡県生まれ。メタボ対策のランニング中に近所を走る箱根ランナーに衝撃を受け、箱根駅伝にハマってしまう。一年中いろんなレースを観戦するうちに、同じような箱根中毒の人々とウェブメディア「EKIDEN News」を立ち上げる。本業はコンテンツプロデューサー。
※週刊ポスト2015年12月25日号