コラム

中国ショックで日本株が世界の中でも突出して下落した理由は

 2015年は中国発の株暴落が世界の市場を揺るがしたが、日本株も一時大幅な下落となった。その背景には外国人投資家の行動があったという。彼らの動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。

 * * *
 まず、日本株投資型ヘッジファンドへの資金流入動向を見ることで、2015年の外国人投資家の日本株売買動向を振り返っておこう。

 前半は、潤沢な資金流入が続いた。1月こそ資金流出のマイナスとなったが、その後4か月連続でプラスとなり、年初から5月までで合計4080億円が流入した(レバレッジをかけた後の実際の株式買い付け金額は8160億円程度と推定される)。

 しかし、6月以降はマイナスに転じ、9月までに、それまでの流入額の9割以上にあたる3740億円が流出することとなった。 特に、8月から9月にかけては2500億円のマイナス。この数字を見ると、8月下旬の世界各国の株価と米ドルの急落を引き起こした、いわゆる「中国ショック」の影響を思い出してしまうが、実際の状況はやや違った。中国ショックが起きなくても、外国人投資家は日本株を売却する予定だったのだ。

 その理由は、ひと言でいうと、9月末のヘッジファンドの決算を見据えた、「益出し」である。

 実は、2015年前半のヘッジファンドの平均パフォーマンスは振るわなかった。そんな中で好調だったのが日本株投資型。年初来からのパフォーマンスに関して、「日本株ボトムアップ型」「日本株絶対リターン型」「日本株デュアル戦略」「日本株イベントドリブン」といった4つの日本株投資型ファンドが、ヘッジファンドの全戦略343種類において、トップから4位までを独占するという異例の事態となったのである。

 つまり、他のヘッジファンドの損失を穴埋めするために、日本株投資型が益出し=売却の対象となった可能性が高い。今年8~9月に行なったヘッジファンドへのヒアリングでも、運用者からは「日本株に見切りをつけたわけではなく、顧客の益出し要求に応じてやむを得ず売却した」とのコメントが多く聞かれた。こうした背景があったため、中国ショックによって、日本株は世界の株式市場の中でも突出した下げを記録したのだ。

※マネーポスト2016年新春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト