そのほか、少し大きなところで言うと、漁業も大きな転換点を迎えている。なぜ水産庁が、マグロやサバなどの幼魚に対する漁獲制限を強化しないのかという声は、この数年、大きくなるばかり。乱獲でいかに日本近海の水産資源が枯渇状態にあるかは、学術者や漁師だけでなく、大手メディアや市民の間にも浸透し始めた。
なるか、「獲ったモン勝ち漁業」からの脱却。東北の若手漁師集団「フィッシャーマンジャパン」のように、質のいい水産物を水揚げし、神経締めなどの新しい手法を駆使して、魚の価値を底上げしようという機運も広がりを見せている。「復活、日本の魚食」。2016年がその端緒の年となることに期待したい。
食における「ハレとケ」の二極化も進む。外食が完全に日常の生活習慣に定着しながらも、健康志向も手放せない。つまり外食を前提とした、内食での献立の組み立てが求められるようになる。外食が日常という家庭では糖質や脂質、塩分の摂取を控えるのが当たり前になり、脂質や塩分を控えながら、満足感を得るためにだしのひき方や使い方が進化する。栄養面の偏りを整える調整食にもなる、具だくさんスープや汁物も存在感を増すだろう。
とは言うものの、その対向に位置する、揚げ物もまた要注目ジャンルのひとつ。外食、内食、中食、いずれのシーンでも、長く生活に定着していたからこそ、その進化のスピードはゆっくりだった。だがこの数年、外食における揚げ物料理の進化は目を見張るほど。内部をほんのりピンク色に仕上げるとんかつや、ミディアムレアで提供するビフカツを出す店も増えた。関東では内部がレアの「牛カツ」店が絶賛増殖中。
コンビニのホットスナックのスペース増については言うまでもない。30年前の中高生は、精肉店の店頭で串カツをほおばっていた。だが、現在の中高生はコンビニの前でからあげクンやメンチカツを食べている。「食」は少しずつその姿を変えながら、われわれのまわりをぐるぐると回っている。
「食」はブームを繰り返すことで、腰の強さと多様性を獲得する。そのことは幾度となくブームを重ねたラーメンやうどんに多様なコシが認められるようになったことからも明らかだ。