国際情報

慰安婦の世界記憶遺産登録阻止 政治家がCNN出演・説明必要

中国はユネスコの政治利用に躍起 Reuters/AFLO

 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)世界記憶遺産への「南京大虐殺」関連史料登録に成功した中国が、次に目指すのは韓国や関係国との連携による「慰安婦」関連史料の登録だ。法学者の八木秀次・麗澤大学教授は、「武器を持たない戦争」だと警鐘を鳴らす。

 * * *
 2015年10月、中国の申請が認められ「南京大虐殺」に関する史料がユネスコの世界記憶遺産に登録された。今後、中国は事大主義で何が何でも日本を叩きたい韓国と手を携え、「慰安婦」の記憶遺産登録を目指すだろう。

 歴史問題は現在の国際政治に直結する。中国や韓国が世界記憶遺産に固執する最大の目的は、国際社会に「日本は悪い国」であり、なおかつ「開き直って反省しない国」であると印象づけ、日本の国力を削ぐことだ。

 そのメインターゲットはアメリカである。中国は極東の歴史に詳しくないアメリカに一方的な情報を提供し、反日・親中の国にして、日米を分断しようと目論んでいる。その究極の目的は日米安保条約の解消だ。ゆえに歴史問題は日本の安全保障問題と直結する。

 中国の狙いはすでに相当、奏功している。韓国ロビーに中国ロビーも協力する形で、アメリカのいくつかの都市には慰安婦像が設置され、2007年に米下院は日本に対する非難決議を出した。

 私は2015年2月、米国大使館の要人に求められ、安倍首相の靖国参拝や戦後70年談話の見通しなどについてレクチャーした。この要人はすっかり中国の流布するストーリーに洗脳されており、頭ごなしに「靖国は軍国主義の象徴だ」との見解をまくしたてた。私は「歴史修正主義者」という扱いで当初はひどく警戒されたが、懇々と日本の立場を説明すると徐々に理解してくれた。

 歴史問題が非常に厄介なのは、「南京大虐殺」にせよ「慰安婦の強制連行」にせよ、いったん「戦争中に旧日本軍が非人道的な行為をした」というストーリーが世界に流布されると、それに対抗するのが非常に難しくなることだ。史実に基づく穏健な立場で「事実と違う」と主張しても、「過去を反省しない愚か者」として、「歴史修正主義者」という強烈な負のレッテルを貼られ、反論の機会を奪われてしまう。

 実際に今回、世界記憶遺産に南京大虐殺を登録するため中国の提出した史料は反論可能なシロモノばかりだが、ひとたび記憶遺産として登録されると既成事実となる。「南京大虐殺」も「慰安婦」も、当事者世代が世を去ると作られたストーリーがひとり歩きし、「虚構の歴史」が「史実」とされてしまう。

 中国が日本を貶めるためにこうした「手法」を使うことが効果的だと気づいたのは、ナチス・ドイツの迫害を逃れるため隠れ家で綴られた「アンネの日記」が2009年に記憶遺産に登録された時と推測される。ユネスコの政治利用を思いついた中国は、登録の可否を決定する国際諮問委員会(IAC)のメンバーと接触するなど、何年もかけて周到に準備を重ねてきた。

 歴史的根拠の乏しい南京大虐殺を、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)と同列に位置づけ、日本とナチスは同じ穴のムジナという印象を国際社会に広めるためだ。さらに彼らは「日本は歴史を反省せず、タカ派の安倍首相のもと軍国主義的な拡張を続けている」というストーリーを世界中に広めようとしている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン