コラム

集団的自衛権の前提となる「米中軍事衝突」に備えた投資対策

 かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得て退社した赤城盾氏によるエッセイ。2015年9月に成立した安保関連法案で「集団的自衛権」が争点となったが、投資家にとってどのような影響があるか。

 * * *
 2012年12月、当時の野田佳彦首相による自爆的な解散総選挙に自民党が圧勝して、デフレ脱却を看板に掲げる安倍政権が誕生した。それからはや3年、1ドル=80円近辺から高値125円台まで急速に進んだ円安の恩恵によって、確かに、上場企業の利益は急増し、日経平均株価はざっと2倍に上昇した。

 しかし、政府がその後に続くといっていたトリクルダウン(*注)は、兆しも見えない。デフレ脱却はおろか、今年度の実質GDPは前年比マイナスで推移している。

【*トリクルダウン/「富める者がさらに富めば、貧しい者にも自然に富が行き渡る」という経済理論】

 ところが、安倍晋三首相は、デフレ脱却は既になったかの如き弁を弄して、GDP600兆円などから成る「新3本の矢」をぶちあげた(*注)。唐突にして、的外れ。当然ながら、株式市場はまったく反応を示さなかった。

【*新3本の矢/安倍首相が「一億総活躍社会」を実現すべく打ち出した、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の政策目標】

 どうも、安倍首相ご自身は、本心のところ、経済に関しては知見も関心も持たれていないように見受けられる。だから、とりまきの「お友達」から折にふれて寄せられるご進言を真に受けて、「医薬品をネットで売らせろ」とか「携帯電話の料金を下げさせろ」とか、些事に口を挟まれるのであろう。

 ただ、まぐれ当たりにせよ、放った6本の矢のうちの1本だけは、ものの見事に核心を突いていた。日銀の革命的な政策転換が功を奏して2倍になった株価は、安倍首相にやりたいことは何でもやれる高い内閣支持率を与えたのである。

 与えた当人である黒田東彦総裁の本願は、財政健全化のための消費増税のはずであったが、安倍首相の本心は経済にはない。2015年10月に予定されていた増税を2017年4月に延期して後顧の憂いを断った上で、主だった憲法学者がこぞって違憲と批難し、世論の過半が反対する集団的自衛権の法制化に邁進したのであった。

 安倍首相が、なぜ、あれほどの執念を燃やしたのかは謎であるが、嬉々として自衛隊を閲兵していた様子から、ミリタリ・マニアであることは察せられる。投資家にとっては、あまりあり難くない趣味である。とりあえず、公明党に借りを返すために、愚劣な軽減税率の導入が避けられなくなった。

関連キーワード

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン