コラム

2016年は欧州と中国のリスクの顕在化で「有事の金」の出番か

 1トロイオンス(31.1グラム)=1050~1250ドルで軟調な展開が続く金相場だが、アメリカの利上げを受けて今後どう動いていくのか、スイス銀行にて貴金属ディーラーとして活躍し、その後ワールドゴールドカウンシル日本代表も務めた豊島逸夫氏が解説する。

 * * *
 2016年の金相場はどうなるか。結論からいえば、金価格はいよいよ「上げ」の年に転換する。ドル高やディスインフレという逆風をこなしながら、新興国の現物買いが主導する格好で上昇トレンドに転じるというのが私の見方だ。

 何しろ中国やインドの金に対する文化的選好度は1年や2年で変わるものではなく、いまでも金の年間生産量の55%を買い占めている。彼らは安いところを買いたいだけであり、1100ドル割れの水準ならこぞって買い増してくるに違いない。アメリカの利上げで底をつけ上昇基調に転じるというのが2016年前半のメインシナリオである。

 その先はどうなるか。私の見立てでは、2016年に世界を取り巻くリスクは大きく2つある。まず1つ目は、欧州でギリシャ危機が再燃するリスクが挙げられる。形ばかりのギリシャ救済に応じたドイツは、自国内を揺るがす難民問題とVW問題に追われ、ギリシャまで手が回らなくなる可能性がある。そうなると、安全資産としてドルや円も買われるだろう。

 そして2つ目は中国リスクである。これまでのツケといえる国営企業と地方政府が抱える債務が顕在化し、社債や理財商品が破綻するといった債務不履行懸念が高まる恐れがある。そのような経済的リスクに加え、南沙諸島問題という軍事的リスクも高まるかもしれない。米中ともに引っ込みのつかない状態に陥り、偶発的な交戦まで想定される。中国を巡る経済と軍事の2つの有事が重なることで、「有事の金」の出番となる可能性が高まってくるのだ。

 そう考えていくと、2016年の金価格は次のようなシナリオとなる可能性が濃厚といえる。年前半、具体的には第1四半期(1~3月)で利上げショックから1100ドル割れとなるが、4月以降、緩やかな利上げの実態がわかってきて、場合によってはギリシャリスクや中国リスクという有事が顕在化。市場心理がガラリと変わり、第3四半期(7~9月)にも上昇トレンドに転じ、年末に向けて1300ドル台までジリジリ上がるという展開だ。

 加えていえば、その上昇トレンドは一過性のものではない。新興国の現物買いが支える、持続性の高いトレンドである。それによって1900ドルをつけた2011年以来続いてきた下落トレンドからのパラダイムシフトが起こり、この先少なくとも20年まで続く長期上昇トレンドにつながっていくと見ている。2016年はその長期トレンドの1年目になる可能性が高い、というのが私の見方である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン