また、脚本の武藤将吾さんは、激しさとゆるさの両面を持つ主人公を描くのが得意。『家族ゲーム』で櫻井翔さんが演じた吉本荒野がそうだったように、人間の弱さを鋭くえぐるような山猫のセリフは見応えがあります。1話では「誰も助けてくれなかった?誰もそばにいてくれなかった?違うだろ!お前が何も見ようとしなかっただけだ。大事なもんはそこかしこにあったんだよ」、2話では「自分のケツが拭けなかったら、誰かに拭いてもらうしかねえんだよ!そういう人間を一人でも多く作るしかねえんだよ!どうやって作るか知ってるか?『ありがとう』だよ」というセリフが印象的でした。
視聴者はシリアスとコミカルのバランスがいい作品を見ると、「見応えと見やすさの両方があるな」と感じるもの。『怪盗 山猫』の原作は見応えのある小説ですが、ドラマ版は漫画のような見やすさを加えることで、人気を得ているような気がします。成宮寛貴さん、佐々木蔵之介さん、北村有起哉さん、菜々緒さんら助演キャストも、個性的で存在感たっぷりなので、最後まで楽しませてくれるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。