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認知症、気づくのは周囲 自覚症状があるうちはまだ安心

 高齢化が進む日本社会。自然と認知症患者が増加することも容易に想像できるわけだが、「ちょっとした物忘れをするたびに、「もしかしたら自分も認知症なのでは?」と不安になる人も多いかもしれない。

 何かを記憶するだけでなく、日常生活で無意識のうちに、常に脳を使っている。年をとると体力や視力が衰えてくるのと同じで、脳の機能も老いていくのは当然のことだ。東京都健康長寿医療センター研究所老化脳神経科学研究部長・遠藤昌吾さんが解説する。

「単に歩くだけでも、脳の機能をものすごく使っています。視界に入ったものを認識したり、障害物にあたらないよう周りに注意を払ったり、転ばないよう体を動かすのも、すべて脳の機能です。また、年をとると体形も変わって身体機能も衰えます。30~40代でも20代の頃に比べると同じような動きはできないので、若い頃よりもっと集中して行動しています」

 1つの行動に集中してしまうがゆえに、もう1つの用事や約束などを忘れてしまう。それは自然現象なのかもしれない。

「主婦のかたもそうですが、忙しくていろいろなことを同時並行で作業していると、新しい情報がどんどん入ってくるので、前の情報を忘れやすくなります。家事、育児、仕事と並列的にいろんなことをやっていると、想像以上に脳に負担がかかっていて大きなストレスになっています」(遠藤さん)

 また、認知症になってしまった場合、気づくのは本人ではなく周りの人であることが多い。桜川ものわすれクリニックの院長・山本大介さんは、こう説明する。

「間違ったり忘れたりしても、周囲から指摘されて“あ、そうだった”と思い出せるなら普通のもの忘れなので、大丈夫です。認知症の場合は指摘されても全く何のことか思い出せません。症状が進んでくると、“私の記憶のほうが正しい”とだんだん頑固になってくるのも特徴のひとつです」

 誰かに間違いを指摘されても、自分では間違っていないと思う。もの忘れを指摘されても全く思い出せない。それが続くと、不安になり疑心暗鬼になり、イライラする──それが認知症の初期によく見られる症状で、自分自身で危ないなぁ、またやっちゃったと自覚症状があるうちはまだ安心なのだという。

 それでも、老化にしろ認知症にしろ症状は徐々に進行していくがゆえに、その境界線は極めて曖昧で不安を抱えている人は多い。「認知症を発症した場合、早期であるほど進行を遅らせる治療が有効になります」(山本さん)と言うように、早期発見・早期治療が鉄則だ。

※女性セブン2016年2月11日号

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