「“これはもう無理だ”って。論文を撤回するしかないと言っていました。あれだけの物的証拠を前にして、小保方さん、そしてSTAP現象自体に対する信頼が失われてしまったんです。彼女は科学者としての基礎的な教育を受けてこなかった。それは否定できないことだと思うんです。データの取り扱いとかプロセスの管理とか、“彼女はあまりにも問題がありすぎる”って、主人の失望は深かった」(A子さん)
調査委員会が立ち上がり、笹井氏にも連日の聞き取りが行われた。A子さんの話に基づけば、当時、彼はすでに科学者としての小保方氏を見限っていたことになる。2014年8月5日、笹井氏は理研の研究棟で自殺した。
《笹井先生がお隠れになった。(中略)金星が消えた。私は業火に焼かれ続ける無機物になった》
小保方氏はあの日の悲劇をこう綴り、数日後、彼からの遺書が届いたことを明かした。当時、遺書にはこう書いてあったと報道された。
「STAP細胞を再現して下さい。それが済んだら新しい人生を歩み直して下さい」
小保方氏は、《内容について一部マスコミの創作があった》と反論した。中身の詳細は手記では触れなかったが、笹井氏が最後に伝えた言葉は、彼女に絶望に抗う力を与えた。
《最後まで、最後の一秒まで、私は逃げずにやりとげる》
心身共に限界を迎えながら、彼女は検証実験に身を投じた。だが、A子さんは、夫が書いた真意が小保方氏には伝わっていないのではないかという。
「主人の遺書にあった“新しい人生を歩んで下さい”という言葉。あれは、“あなたには研究者の資質がないから辞めなさい”という意味なんです。実際、主人は何度も言っていました。“彼女は研究者には向いてない。辞めたほうがいい”って。これが、彼女を間近で見てきた主人が最後に下した結論だったのです」
笹井氏の一周忌も過ぎた2015年11月2日、小保方氏の出身大学である早稲田大学は小保方氏の博士号を取り消した。彼女の研究者人生は、この日、終わった。
※女性セブン2016年2月18日号