スポーツ

清原和博容疑者と江夏豊氏の違いをベテラン記者が述懐

清原氏は覚醒剤から立ち直って欲しい(MM4 / PIXTA)

 元プロ野球選手の清原和博氏が覚醒剤所持容疑で今月2日に現行犯逮捕された。清原氏と覚醒剤の疑惑は週刊文春が2014年に報じて以来、さまざまな噂が飛び交っていた。しかし本人が明確に否定し、テレビ露出度も増えてきただけに、突然の逮捕に「やっぱり」「残念」という思いがネットで交差した。フリー・ライターの神田憲行氏が想いを綴る。

 * * *
 清原和博氏が現役選手を引退して解説者になった1年目か2年目だったろうか、夏の高校野球観戦記を書くという話が、私が仕事をしている週刊誌編集部にきた。覚醒剤の噂などみじんも出てないころで、

「清原は試合開始で甲子園でなるあのサイレンをすごく楽しみにしているんですよ。そこが自分の原点だったので」

 という関係者の売り込みだったと聞く。

 とりあえず甲子園球場で編集者とライターの代表で私が清原氏に挨拶することになった。ロープを張った関係者専用の観戦席に清原氏は飛び込むように入ってくると、誰ともなにも話さず、椅子に座り込んで携帯電話のゲームをやり始めた。グラウンドに全く目もくれず、大きな身体を丸めてゲームをやっている姿と、それを黙って取り囲んでいる関係者の姿が異様でよく覚えている。

 清原氏が楽しみというサイレンが鳴っても、まだゲームを続けていた。私は他の取材もあり、アホらしくなって「俺、帰るわ」と編集者に言い残して挨拶せずに自分の取材席に戻った。もうあの人は野球に興味ないんじゃないか、と思った。

 私が憤りをもったのは、ある野球解説者の姿が頭にあったからだった。

 江夏豊さんである。99年の夏の甲子園に観戦記を書くために来た江夏さんは、記者席で「商売道具持ってきたで」と鞄からスコアブックを取りだした。それからベテランの野球記者が入れ替わり立ち替わり江夏さんのところに挨拶にきた。江夏さんが出ている雑誌を持ってきて、「サインお願いします」という記者もいた。いや、それどころか、スポーツ店で買ってきたばかりのグラブを差し出してサインをねだった記者もいた。

 記者が取材相手にサインをねだるのはかなり恥ずかしい行為である。しかも他社が呼んだゲストだ。その恥ずかしさを忍ばせるくらい、江夏さんは圧倒的な存在感があった。

 試合が始まって、江夏さんと担当編集者の席をチラチラ見ていると、手違いで飲み物が運ばれていないのがわかった。慌てて取材席まで駆け上がると、江夏さんは「イチ、ニィ、サン、シ……」とイニングの投球数を声を出しながらあの黄金の左の指で確認しているところだった。

「江夏さん、お飲み物をお持ちしましょう。なにがいいですか」

「なにがあんの」

「なんでもご用意します」

「お茶か水」

 そしてまた「イチ、ニィ、サン……」と数え始めた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン