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清原和博容疑者と江夏豊氏の違いをベテラン記者が述懐

 ペットボトルを持って上がったときに江夏さんのスコアブックをふっとのぞくと、「球場名」に「甲子園」と記入し、審判名から試合開始時刻まですべて記入してあった。試合後には詳細な公式スコアが配られるので、そこまで記入する人は野球記者でもまずいない。あとで担当編集者に聞くと、江夏さんの昼食用に豪華な仕出し弁当を用意していたのだが、「そんなもん食うてる暇あるかい」と言われ、第1試合から第3試合までなにも食べずに観戦していたそうだ。

 準決勝戦は私も江夏さんのそばで試合観戦していた。劇的なサヨナラ負けの瞬間、それまで黙って腕組みしていた江夏さんが突然、目の前の電話機を取りだしてどこかに電話をし始めた。

「せやな、せやな、うん、ええ試合やったわ……」

 そう会話して受話器をガチャリと置くと、振り返って私を見た。

「嫁はんも泣いとるわ」

 試合に感動して、その気持ちを誰かと分かち合いたくて、奥さんに電話したのだった。どんだけ野球が好きやねんこの人は、と感動した。

 江夏さんも1993年に覚醒剤の所持で実刑判決を受けている。しかし野球に対する真摯な姿勢を評価されて、再び解説者の席に戻ることが出来た。私が甲子園で出会ったのも、出所してからのことだ。

 清原氏は逮捕されたばかりでこれからどうなるのかまだわからない。しかし覚醒剤所持と使用を認めているので、執行猶予がつくかどうかは別にして、なんらかの有罪判決が出る公算が大きい。報道によると捜査員が自宅に踏み込んだときに注射器とストローを持っていたという。また素直に自供もしている。

 私は清原氏が覚醒剤の地獄から抜け出すため、逮捕にむしろホッとしているのではないかと感じる。罪を償い、どんな形でもいいからもう一度グラウンドに戻って来た姿をみたい。酒場の武勇伝でなく、江夏さんのようなコアな野球の話を清原氏から聞きたい。戻るべき原点、取り戻せる自分の姿が彼にはある。

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