「たしかに男性たちは、店頭の化粧品コーナーに足を踏み入れることさえ躊躇しますよね。でも、髪の毛を美容院でカットするという男性は今の時代、とても多いんです。私たちはそのチャンネルに注目し、美容院から細かな商品情報を発信し販売にも力を入れているんです」

 なるほど。ミドリムシのエキスを活用した化粧品だけあって、販売チャンネルも実にユニーク。いやそれだけではなかった。安藤氏はさらに驚くことを口にした。 「実は美容師さん自身もユーザーが多くて、全国で20万人ほどいる美容師の約1万人、20人に1人がすでにB.C.A.D.ブランドを使ってくださっているんです」

  食料問題、環境問題、エネルギー問題に対峙して「ミドリムシが地球を救う」と注目を集めるバイオテクノロジーベンチャー。快進撃を見せるユーグレナ社の売上高は59億2400万円(2015年9月期)、前期と比べてほぼ倍増し、経常利益は7億2600万円と約3.8倍に急成長している。

 株式時価総額は上場時106億円から約1328億円(2016年1月19日現在)と、なんと12倍。それもこれも「月産耳かき1杯分」しか作れなかったミドリムシを屋外で大量培養する技術を確立したところから始まった。

「もうダメかなという時も何度かあった」と安藤氏。 「それでもがんばれたのは、社長の出雲充はじめ私たち自身がユーグレナが凄い力を持つ生物だと信じきれたから」

 ブランド名の「B.C.A.D.」は、「B.C.」が紀元前、「A.D.」は紀元後を示すという。「太古と現在をつなぐ」深い意味が込められている。

 同社は2020年までに食品・化粧品等含めて100万人のユーザー獲得を目指す。大きな夢を掲げる男たちの、身だしなみを支える「B.C.A.D.」は、ジェット燃料とともに、戦う男たちのエネルギー源になっていくだろう。

※SAPIO2016年3月号

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