国際情報

106歳女性教師の手紙が88歳の台湾人生徒に届くまで【前編】

 台湾の新総統である蔡英文氏は、中国依存からの脱却を掲げる一方、日本との連携強化に動き出した。彼女は戦前の日本統治時代についても、「日本人には誤りもあったが、台湾に対する貢献もあった」と冷静に評価する。新総統の誕生によって、日台関係は再び蜜月の時代を迎えようとしている。

 国を挙げての盛り上がりとなった総統選の期間中、実はもう一つ、台湾で話題を呼んだ“ちょっとした騒動”があった。それは、70年前に遡る日本と台湾の“絆”を、いまの台湾人に思い起こさせる話だった。

 騒動は、熊本県玉名市在住で106歳(取材当時、以下同)の高木波恵さんが出した1通の手紙から始まった。高木さんは1930年代、日本統治時代の台湾台中市にあった烏日公学校(現在の烏日小学校)で教鞭を取り、主に小学2~3年生の台湾人生徒を指導していた。

 昨年2月、台湾で大ヒットした映画『KANO』の日本公開を知った高木さんは、久しぶりに台湾の教え子たちに手紙を書いてみようと思い立った。『KANO』は日本統治時代の台湾に実在した嘉義農林学校(現在の国立嘉義大学)の野球部が、海を渡って甲子園に出場し、初参加ながら準優勝するまでを描いたスポーツドラマだ。

 実は高木さんは映画のなかで描かれている決勝戦を、烏日公学校近くの役場で、同僚たちとともに実際にラジオで聞いている。決勝戦が行なわれたのは1931年8月21日。映画の公開をきっかけに、80年以上も前の古い古い記憶が呼び起こされた。

 教え子たちもすでに90歳近くなっており、消息がわからない者もいる。20年ほど前までは手紙の往来もあったのだが、1999年に発生した台湾大地震以降、完全に音信が途絶えていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン