ライフ

定年退職男 喋る相手は妻や猫や1日3回行くコンビニ店員

 人づきあいがなくなると老化が進む、というが、自分は同僚や友人と会っているから安心、と高をくくっている人も多いのでは? 実は同じ人づきあいでも、特定の相手とばかりつるんでいると「老化」していくのである。

 例えば、つきあう相手が固定化して、動脈硬化ならぬ「人脈硬化」が起きたり、前例踏襲で仕事を進めるだけになり、変化や挑戦にNOを連発してしまう『NO梗塞』になったりする人は多い。

 人脈硬化やNO梗塞は、仕事に支障が出るだけに問題はとどまらない。会社勤めをしている間は、それなりに同僚や取引先との交流があるし、毎日会社に通勤するので、会社帰りに飲みに行ったり、趣味の会に参加したりといったこともそれほど億劫にはならない。

 しかし、会社を定年退職すると、生活スタイルがガラリと変わり、会社絡みの交流さえもほとんど途絶えてしまうため、「人脈硬化」や「NO梗塞」を発症してしまう人が多いのだ。都内在住の元新聞記者の男性(66)はこういう。

「あれだけ人と会って情報を追っかけていた職業だったが、定年退職で仕事をしなくなると、肉体的にも精神的にも、行動範囲が狭くなる。気楽に話が通じる人としか会わなくなるが、雨が降ったり寒かったりすると、それさえ面倒になってくる。最後は近所の猫に『ええ天気やな』と話しかけている(苦笑)」

 新聞記者という人脈を広げる職種の人でも、定年退職で人脈硬化が一気に進んでしまうのである。元酒造メーカー勤務の男性(69)も現在の生活をこう話す。

「ずっと営業畑を歩いてきたから、人と会うのが仕事みたいなものでした。夜はうちの商品を扱ってくれている店で食事するのが日課で、その店の主人や常連客といろんな話で盛り上がった。

 話のネタ集めに新聞や週刊誌、本もよく読んだ。だけど、いまは郊外から都心に行くのも億劫。たまにゴルフにも行くけど、いつも同じメンバーで、話す話題も孫の話、病気の話、あとは息子の嫁か家内の悪口と決まっている。話す相手がいないから、新聞も読まなくなったよ」

 人と会わなくなると、情報収集もしなくなり、世の中からますます隔絶されていくようだ。元製造業の男性(67)も、まったく人に会わなくなったという。

「話す相手は、嫁とコンビニの店員しかいない。1日に3回コンビニに行くんだけど、そこの店員との会話が楽しいよ」

 楽しいのなら、それはそれで構わないのかもしれないが……。

※週刊ポスト2016年2月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
元・明石市長の泉房穂氏
財務官僚が描くシナリオで「政治家が夢を語れなくなっている」前・明石市長の泉房穂氏(62)が国政復帰して感じた“強烈な危機感”
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン