神奈川県川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11~12月に入居者3人が相次いで転落死した事件で、ついに同施設の元職員、今井隼人容疑者(23)が神奈川県警に殺人容疑で逮捕された。今井容疑者は「殺すつもりで突き落とした」と供述しているという。
逮捕後、彼の姿をテレビで見て、「あっ、あの人だ!」と息を呑んだ女性がいる。同施設に入居中の2014年12月12日に亡くなったAさん(享年89)の長女だ。
本誌は昨年、3人の転落死のほかに、同施設で今井容疑者が担当する女性が「不審死」した疑惑を報じた(2015年10月9日号)。そのとき亡くなった女性がAさんだ。遺族である長女がいう。
「テレビで今井の姿を見て本当に驚きました。彼は母の担当で、母が倒れて亡くなったときの第一発見者でもあったんですが、おかしい点があった。彼は、午前5時頃部屋の見回りに行ったときに、ベッドから離れた部屋付きのトイレの前で倒れていた母を発見したと言うんですね。
でも母は寝たきりで、1人で起き上がれる状態ではなかったから、なんでトイレの前? って不審に思いました。実は母はその前にも倒れて病院に搬送されているんですが、最初に母が倒れた時も彼が第一発見者でした。一緒に救急車に乗ったら、その車中で救急隊員が発見時の状況を尋ねても彼ははっきり答えられず、隊員が怒って問い質していたんです」
Aさんの死後、検死が行なわれ、「死因は多臓器不全で事件性はない」と診断されたが、残された長女は納得がいかない様子で語る。
「医師に『母は寝たきりですよ』と尋ねると『起き上がって徘徊はできる』と言われました。でも3人の転落死と同じ時期でもあるし、今回の逮捕でどうしても彼の関与を疑ってしまう」
単なる長女の思い過ごしだろうか。同じくこの「不審死」を疑う今井容疑者の元同僚の証言も気にかかる。
「転落死した人たちの生前、今井は『この人たちそろそろやばいかも』と言っていました。その後、本当に次々と亡くなったのでおかしいなって。実は彼はAさんのことも『そろそろかも』と言ってたんです……」
今井容疑者の逮捕後、警察には入居者の家族からの問い合わせが相次いでいる。警察が解明すべきは3件の転落死だけではない。
※週刊ポスト2016年3月4日号