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介護殺人に温情判決 やむにやまれぬ犯行と認められた面あり

 昨年7月、世間の関心を集めた2つの介護殺人事件の判決が下された──。7月8日、妻(当時83歳)に対する嘱託殺人の罪で起訴されたA氏(93歳)に、千葉地裁は「懲役3年、執行猶予5年」を言い渡した。公判で明らかにされたのは60年以上連れ添った最愛の妻を自らの手で殺めなければならなかった夫の悲痛な心情だった。

 事件が起きたのは2014年11月。千葉県内の自宅で妻の首にネクタイを巻き付け殺害したA氏は「妻を殺した」と自ら110番通報し、逮捕された。

 その前年10月に妻は転倒して腰を骨折。自力歩行が困難になり、痛み止めの薬も効かず、昼夜を問わず苦痛に苛まれるようになった。「痛みで眠れない」「もう死んでも構わない」と何度も訴える妻の姿を見て、A氏は「妻はなんでこんなに苦しむんだ!」と苦悶に満ちた声で叫んだ。当時、A氏は妻と2人暮らし。

〈自宅において被害者とほぼ2人きりの閉ざされた環境で眠る間もなく献身的に介護を続ける中で、次第に疲弊し、追い詰められた〉(判決文より)

 事件当日。廊下で転倒した妻から「もう痛みに耐えられない。何もできない。苦しいだけ。殺してほしい」と懇願され、A氏は“もう断われない”と決心。その日の夜、添い寝をしたA氏は楽しかった思い出を妻に語り続けた。その時の様子を「妻はニコニコしていた。とても綺麗だった」と公判で話している。

 判決後、裁判官は「奥さんが悲しまないよう、穏やかな日々をお過ごしになることを願っています」とA氏に語りかけた。

 この判決の9日後、熊本地裁は妻(当時67歳)に頼まれ首を絞めて殺害したB氏(71歳)に「懲役2年6月、執行猶予4年」の判決を言い渡した。

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