「アメリカでもそうですが、地上波のテレビ放送は表現の自主規制がとても多い。一方でSVOD制作作品は、表現方法についてはその都度検討するため結果的に自由度が高い。CMを挟む時間やタイミングをつくる必要がなく、全体の長さも厳しくきめられていないので、例えば一般的なドラマ(テレビ放送向けでは正味43分程度)でも、46分だったり53分だったりと、まちまちです。自由度の高さはクリエーターの表現の幅を広げ、結果として面白いコンテンツが誕生しやすくなっています」(前出・西田さん)
より品質が高いコンテンツを求めてNetflixとAmazonプライムは制作だけでなく、新作発掘にも熱心だ。毎年1月に開かれるサンダンス映画祭は配給会社の買い付け担当が多く集まることでも有名だが、今年は人種問題を扱った『The Birth of Nation』が史上最高額の1750万ドル(約19億円)でフォックス・サーチライトが落札した。最高額を記録したのは、NetflixとAmazonによる高額提示と買い付けが相次いだからだといわれている。
「SVOD事業者は消費者動向を統計から捉え、効率的な投資をします。そして、そこで良い作品を手に入れるには、お金も惜しまない。映画祭の買い付け金だけでなく、ドラマの製作費用もいまもっとも用意できるのが、豊富な資金力を持つNetflixやAmazonだということです」(前出・西田さん)
最高額の落札は逃したものの、サンダンス映画祭でAmazonは『Manchester by the Sea』の劇場配給権とストリーミング配信権を1,000万ドル(約12億円)で、Netflixが『Tallulah』のストリーミング配信権を500万ドル(約6億円)で獲得しており、買い付け額の上昇を促している。高額化は完成品の買い付けだけではない。オリジナル作品の制作でも資金力の強さが際立っている。
マーベルコミックスのヒーロードラマ『デアデビル』4部作シリーズの総予算は3年間で2億ドル(約240億円)で、単純計算すると1話あたり330万ドル(約4億円)かけているといわれる。Amazonはジム・ジャームッシュ、スパイク・リー、テリー・ギリアムら映画監督と契約を結び、ウディ・アレンの新作映画のために1500万ドル(約18億円)で契約したと報じられている。
「高額買い付けに目がいきがちですが、SVOD作品は表現の自由度が高いことも特徴です。地上波のテレビ放送は、アメリカでも自主規制がとても多い。一方でSVODの場合は表現方法についてその都度検討するため弾力的です。表現の幅が広がることで、結果としてクリエイターが面白いコンテンツを生み出しやすくなっています」(前出・西田さん)
日本向けSVODの制作が活発になる今年は、ドラマや映画の楽しみ方の常識が変わる年になるのかもしれない。