中川:いやあ、本当にアメリカらしいというか…。僕が住んでいたアメリカの街もめちゃくちゃでしたね。そこは、とあるネオナチ団体アメリカ支部の創設者の出身地なんですよ。で、毎年その創設者の誕生日にネオナチの連中が公園までパレードをするんです。人口3万人くらいの小さな街だったんだけど、人種差別は当たり前だし、そういう街がアメリカ全土にたくさんあるわけですよ。
勝谷:そうだろうね。
中川:日本のメディアで報じられるアメリカというと、シリコンバレーとかニューヨークとかロサンゼルスのイメージだけど、アメリカでは僕が住んでいた田舎町みたいに、すごく保守的で差別主義的なところも多い。だから、トランプさんがあそこまで支持されてるんだと思いますね。
勝谷:たしかにその通りだと思う。でも、これまでのアメリカの保守的な人たちって、実は「家柄信仰」があったんですよ。日本の皇室やイギリスの王室に対する憧れ、みたいな。だから、ケネディ家が人気だったし、ブッシュ家だってそう。ヒラリー・クリントンもファミリーの大きな物語を前に出して、アメリカ人の「家柄信仰」みたいなものを狙っていたんだと思う。でも、トランプさんを見ていると、最近はそういうものが失われてきていることが分かる。いわば、エスタブリッシュメントとは関係ない票がアメリカを決めるようになってきて、これは非常に面白いと思う。
中川:なるほど。でも、トランプさんは1980年代に「トランプ・タワー」なんかを作って不動産王として有名だったわけですが、今ここにきて熱狂的に支持されるようになったのはどうしてだと思いますか?
勝谷:ひとつは自分の金でやってるから。ヒラリー・クリントンにしたって、全部ヒモ付の金なんだよ。トランプさんは「ヒモ付きの金は貰わない」って言ってるから。こういう人はなかなか日本では出てこないよね。強いて挙げるなら、亡くなったけどいろんな首長選に出馬していた羽柴秀吉さんかな。
中川:あとは、マック赤坂とか、又吉イエスとか!
勝谷:次々名前が出るな(笑い)。まあでも、やっぱり他人から金を集めるとどうしても貸し借りができる。特にアメリカは「借りは返さなければいけない」っていう意識が強い。そのあたりを有権者が見てるんだよ。
中川:なるほど。ちなみに歴代のアメリカ大統領でいうと、トランプさんは誰に近いんですか?
勝谷:誰にも似てないね。あえていうなら出てきた頃のロナルド・レーガンかな。あんな人が大統領になるなんて誰も思ってなかったでしょ。
中川:俳優ですもんね。
勝谷:そう。それにしても、トランプさんが大統領になったらすごいことになるよ。トランプ、プーチン、習近平が出揃って、もう漫画三国志みたいなもんだよ(笑い)。これはもう劇画の世界。池上遼一先生に描いてほしい(笑い)。
中川:これはすごいですね。
勝谷:何が起きても不思議ではないよね。
撮影協力■ネコ文壇バー 月に吠える