さらに、ますます地震保険への加入を躊躇させる制度改定も控える。来年1月より地震保険の保険料が全国平均で5.1%上がることになっているからだ。その後も段階的に引き上げられ、最終的に19%増になる見込みだという。
地震保険は国と民間の保険会社が共同で運営する公的性格が強いため、どの保険会社を選んでも保険料は変わらないが、地震発生リスクや被害リスクに応じて、都道府県ごとに保険料は異なる。
その基準額が一斉に値上がりすることで、例えば、現在2万200円(耐火住宅)の東京都の年間保険料は、平均値上げ率よりもぐんと高く最終的に40%増になる方針なので、1万円弱の追加負担を強いられることになる。
出費ばかりが嵩んでリターンが少ない地震保険は、「やっぱり必要ない」と選択肢から外す向きもあるだろう。しかし、ファイナンシャルプランナーの紀平正幸氏は、「保険の優先順位を見直すべき」と、こんなアドバイスをする。
「ただでさえ給料や年金が増えず、毎日の生活資金で精一杯という家庭にとって、これ以上の保険料負担は厳しいはず。しかし、いざ大地震が来てマイホームが倒壊すれば、その損害はとても自分で賄いきれる額ではありません。そう考えると、地震保険は初めから『家を持つコスト』の一部に組み込んでおくべきだと思います。
もし、加入負担が大きいようなら、地震保険単体で決めずに、他にかけている保険全体を見直してみるといいでしょう。
例えば1日3000円とか5000円の入院費を補償する医療保険などは、ある程度は貯蓄で対応できるでしょう。そうした保険料コストを全体で抑えていくことによって、地震保険に加入する余地が生まれるかもしれません」
2011年に起きた東日本大震災で支払われた地震保険金の総額は、約1兆3000億円に及んだ。ここまで損害額が大きくなる保険だけに、民間の損保会社では到底リスクを背負いきれず、国のバックアップを受ける形になっている。
だが、“地震大国ニッポン”の国民不安が増す一方の今こそ、地震保険の仕組みや保険料基準、被害査定のあり方も含め、制度そのものも見直すべき時期にきているのではないか。