「大河ドラマの時は、NHKの稽古場に行って、稽古をしながらどう芝居をするかを考えます。演出家から指示が出る時もありますし、その時もそれをどう表すかをその場で考える。もちろんそれなりの準備はしていきますが、基本的に『出たとこ勝負』です。そこに行って初めて、その中で自分がどう生きるべきかが見えてくるわけですから。
『千利休』では最後に宗二が秀吉の怒りを買って殺されるのですが、あの狂乱の立ち回りは凄く大変でしたね。秀吉を芦田伸介先生がやっておられたのですが、僕にとって最初のドラマの『遥かなるわが町』でご一緒していましたから、少しリラックスしていられました。
ただ、それはまあ大したことではないんですよ。もちろんあらかじめ『山上宗二だったらこういう風に言うだろう』という自分なりの役作りはしました。でも、実際にそういうのを作りすぎると、本番では難しい。『このようにやりたい』があまりあると、それに束縛されてしまう。束縛されると、いい芝居はできませんから。それよりも、自分のその時の感じ方を大切にして、その方向を信じて作っていくほうがいいと思っています」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』(文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』『市川崑と「犬神家の一族」』(ともに新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
◆撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年4月29日号