国際情報

台湾の慰安婦問題は反日だけでなく人権問題等様々な解釈

慰安婦記念館。簡素な外観からは、つましい印象を受ける

 慰安婦問題は日本を悩ませる大きな外患で、中国や韓国で沸き起こる反日感情の素地でもある。一方、過去に日本の植民地支配を受けた台湾も、中韓と同じ文脈で語られることが少なくない。だが、ノンフィクションライター・安田峰俊氏の現地取材からは、「反日」だけでは説明できない側面も見えてくる。

 * * *
 慰安婦問題について、台湾の状況は独特だ。

 今年3月8日、歴史的な街並みが広がる台北市内の迪化街で、「阿媽家(おばあちゃんの家)」という記念館の除幕式が実施された。通称は「慰安婦記念館」。式典には馬英九総統のほか、存命する台湾人元慰安婦も出席し、日本政府への謝罪と賠償を訴えた。

 設立母体である婦女救援基金会(婦援会)の調査では、「被害」の証言が確認された台湾人元慰安婦は59人(うち現時点での生存者は3人)。昨年12月に日韓間で慰安婦問題の決着が図られたこともあり、台湾についても解決を訴えている。

 だが、婦援会の康淑華執行長は活動方針をこう話す。

「慰安婦問題は『反日』を主張するための政治問題か、それとも人権やジェンダーの問題か。様々な解釈がありますが、私たちの認識は後者です。台湾人として、自国の女性が過去に苦しい目に遭った事実への名誉の回復を求めています。賠償よりも日本政府から彼女たちへの謝罪が欲しい」

 実のところ、婦援会は慰安婦問題の追及だけをおこなう組織ではない。DVやリベンジポルノ被害者の救援、性的人身売買の解決など、女性の権利擁護活動を手広くおこなっている人権団体だ。

 前出の「阿媽家」についても、慰安婦に関連する展示は全体面積の半分ほど。残りは女性問題のワークショップ会場や困窮女性の自立支援の場として使われる予定だという。

「慰安婦に限らず、私たちは一切の売春行為や戦時性暴力に反対しています。例えばIS(イスラム国)の性奴隷制度も、韓国軍によるベトナム戦争中のレイプ問題も、過去の中華民国軍の『軍中楽園』(慰安婦制度)も、すべて問題だと考えています」(康氏)

 やや極端だが、ブレない姿勢であることは間違いない。

関連キーワード

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン