緑内障の最大の問題は、欠けた視野は二度と回復しない点だ。そのため緑内障と診断されても、目薬や手術などで進行を抑制する以外の治療法はなく、患者は常に失明の恐怖に晒されることになる。
「治療を受けても元の視野に戻るわけではないから、正直、治療のモチベーションは上がらない。それでも、車を運転していて、ミラーで後ろを確認する時、本来なら見えているはずのものが見えていないのではないかと不安になるんです」
そう語る森本氏は、進行具合を確認するため、見える範囲を調べる「視野検査」を定期的に受けてきた。
「検査を受けるたびに視野が欠けている部分が広がっている。それを見るのが怖い。今は右眼が進行しているだけでなく、問題なかったはずの左眼も緑内障を発症して4割ほど視野が欠けてしまった。
そこまでくれば、さすがに日常でも見える範囲が狭まってきたのを感じる。特にテレビの字幕に視線を持っていくと、上の映像が見えなくなる時が仕事柄つらいですね。今は何とか水際で止めているけど、ある日突然、眼のシャッターが下りたままになってしまうのではないかという恐怖は常にあります」(森本氏)
※週刊ポスト2016年6月17日号