コラム

ソロスの右腕 「株から撤退せよ。金を持て」と発言

「株から撤退せよ。金を持て」と発言

 5月の上旬には1トロイオンス(31.1グラム)=1300ドル近くまで上昇した金相場だが、今後どう動いていくのか、金の動向に詳しい豊島逸夫氏が解説する。

 * * *
 現在の金価格はドル相場次第で「ドル安なら上がり、ドル高なら下がる」という逆相関関係が明確になっている。

 そもそも金は基軸通貨であるドルに対する不信任投票といえる。だから米国の利上げが当初想定された年4回ペースではなくなるなど利上げ観測の後退を背景にドル安基調が続くなか、ドル建て金価格は年初の1100ドル割れから1300ドル台直前まで急騰してきた。

 ここまで米FRB(連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切れない要因が次々と浮上している。

 まず、国内要因としては、米国経済の綻びともいえる状況がある。今年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率が1%を下回る低水準となり、雇用統計も質を伴った改善とはなっていないなど、ここにきて成長の鈍化が懸念され、とても利上げできる環境にない。

 外的要因としては、依然先行き不透明な中国経済に加え、イギリスのEU(欧州連合)離脱問題ものしかかっている。6月に予定される国民投票で離脱となれば、英ポンドの暴落は必至であり、これも利上げを延期させる要因となっている。

 さらにここにきて浮上しているのが、誰もがあり得ないと思っていても絶対ないとは言い切れなくなった「トランプ大統領リスク」である。トランプ氏はドル高を問題視し、「イエレンFRB議長を更迭する」などと発言しており、これも米経済を少なからず揺さぶっている。
 
 そのような米中欧の不安要因によって、特に米国では株に対する不信感が高まるなか、ニューヨーク先物市場で金が囃される構図となっている。
 
 実際、5月の連休中にはそれを象徴するような出来事も見られた。ニューヨークで開催されたヘッジファンド会議で、「ソロスの右腕」と称される伝説のファンドマネージャーであるドラッケンミラー氏が「株から撤退せよ。金を持て」と発言したのだ。

 同氏の運用するファンドは過去30年間、一度もマイナスがなく、年間平均リターン30%もの実績を残している。そんな同氏が昨年4~6月期に金ETFを約3億ドル(8トン相当)購入しており、まだまだ注目するというのだから、ヘッジファンドをはじめ短期マネーがこぞって金を買い上げるのも当然だろう。

※マネーポスト2016年夏号

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン