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小金井刺傷事件 西鉄バスジャック被害者が女子大生にエール

 東京・小金井市でファンの男に刺されて意識不明の重体となっていた女子大生・冨田真由さん(20)が6月3日、事件から約2週間ぶりに意識を回復した。

 日本医科大学付属病院高度救命救急センター部長の横田裕行教授によれば、冨田さんの回復は「奇跡的」だという。

「病気での心肺停止の場合はAED(自動体外式除細動器)などで蘇生することも珍しくなくなりました。しかし、今回のような外傷による心肺停止のケースでこうして回復するのは非常に珍しい。それだけ救急隊の搬送から救命チームへの連絡がうまくいき、高度で適切な措置が行なわれた結果だと思います」

 冨田さんはナイフで首など20か所以上を刺されたが、頭部や心臓などの臓器に損傷はなく、脳機能にも異常がないという。

 このまま順調に回復できれば、熱を入れていた芸能活動への復帰も視野に入ってくるだろう。冨田さんの舞台を共にした劇団関係者が話す。

「彼女は高校生の頃から女優志望で、昨年10月の舞台では初の主演を務めたほどの実力派。主演舞台では緊張しながらも、持ち前の度胸で見事に演じていた。最後のカーテンコールでは毎回、目に涙を溜めていた。それだけの努力をしていた子だったんです。

 それから所属事務所を辞め、舞台を離れて歌手活動に専念し始めました。あれだけ歌手として成功する夢を持っていた子だから、きっと大怪我を乗り越えて再び夢を追いかけるはず」

 しかし、復帰に向けて懸念されるのが「心の傷」だ。ストーカーと化したファンから受けた外傷は重体に陥るほどだっただけに、事件で負った精神的なダメージは周囲の想像以上だろう。

 2000年5月に発生した17歳の少年による西鉄バスジャック事件で両手や頬、後頭部など10か所以上を牛刀で切られる重傷を負った山口由美子さん(66)が、自身の経験をもとに語った。

「私の場合は首を刺されたのが大きかった。後遺症も残ってしまって、今でもずっと痛いんです。手も思うように動かず、一時は裁縫も習っていたのですが、途中で諦めました。

 もちろん心の傷も残ります。退院して自宅に戻り、魚をさばこうと包丁を持った時にふと、『少年はこんな感じで私を刺したのではないか』と思い出してしまって。少年と同じ年頃、同じ背格好の少年を見ると、ドキッとしてしまうことも続きました。

 冨田さんには、これから多くの人の支えが必要だと思いますが、事件に負けずに頑張ってほしいです」

 再びステージに立つ日が訪れることを祈る。

※週刊ポスト2016年6月24日号

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