国際情報

慰安婦合意 日本は韓国が関係改善せざるを得ない時まで辛抱

「安保のための合意」とは言われたくない YONHAP NEWS/AFLO

 昨年末の「慰安婦問題」解決のための日韓合意が実現に向けて動き出したかのように見える。日本政府が10億円を拠出する元慰安婦の支援財団は、今年6月末の設立を目指している。しかし同時に、看過できない動きがある。

 去る4月26日、韓国の朴槿恵大統領は、韓国メディアとの懇談会でソウルの日本大使館前に設置された少女像の撤去について「(日韓)合意で言及もまったくされなかった問題」と発言したのだ。「合意事項の一つ」とする日本側と真っ向対立する朴発言の裏には何があるのか。前在韓国特命全権大使の武藤正敏氏が読み解く。

 * * *
 慰安婦問題において、これまで譲歩するばかりだった日本だが、今回の合意では安易な譲歩は見せなかった。昨年は日韓国交正常化50周年の記念の年であり、この機を逃せば、韓国は合意をまとめる口実を失う。加藤達也・産経新聞前ソウル支局長への無罪判決も関係改善のシグナルであったと言えよう。日本は、韓国が関係改善に向けて動かざるを得ない時点までよく辛抱したといえる。

 こうした先例をつくった意義は大きい。今後の最大の関心事は「合意」が正しく履行されるかどうかであるが、少なくとも朴大統領は、先頭に立ってこの問題に取り組んでいると私は見る。

「合意」が発表されたとき、元慰安婦支援施設「ナヌムの家」の元慰安婦が激しく抗議した際、朴大統領は「この合意は最善を尽くした結果である。これを無効と言えば、今後どの政府もこうした難しい問題には手をつけられないだろう」と反論した。これまで挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)など元慰安婦の立場を“代弁”してきた組織からの抗議に対し、まったく言いなりであった韓国政府首脳としては異例の発言である。

 こうした発言や、韓国政府自ら財団をつくり元慰安婦を支援するといった合意内容からも、韓国側の本気度が窺える。

 実は、韓国国民も「合意」を受け入れ始めている。5月半ばに発表された読売新聞と韓国日報社の合同世論調査では、日韓関係が悪いと答えたのは日本が66%、韓国が82%だった。1年前に比べて日本19ポイント、韓国7ポイント改善している。また、「日韓合意」については、韓国で「評価しない」と答えたのは73%だった。「日韓関係が悪い」と答えた82%と比べると、9ポイントも少ない。「納得はできないけれど、しょうがない」という雰囲気が表れていると私は見る。

関連記事

トピックス

中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
スカイツリーが見える猿江恩賜公園は1932年開園。花見の名所として知られ、犬の散歩やウォーキングに訪れる周辺住民も多い(写真提供/イメージマート)
《中国の一部では夏の味覚の高級食材》夜の公園で遭遇したセミの幼虫を大量採取する人たち 条例違反だと伝えると「日本語わからない」「ここは公園、みんなの物」
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
『国宝』に出演する横浜流星(左)と吉沢亮
大ヒット映画『国宝』、劇中の濃密な描写は実在する? 隠し子、名跡継承、借金…もっと面白く楽しむための歌舞伎“元ネタ”事件簿
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン