世界的ブライダルファッションデザイナー・桂由美さんをモデルにした小説『ウエディングドレス』(幻冬舎刊・1728円)は、花嫁衣装をキーワードに、戦後70年の女の歴史をリアルに描いている。執筆した作家の玉岡かおるさん(59才)に、本に込めた思いを聞いた。
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――ミシンの描写は、ボディーや糸の棚の配置まで鮮やかに描かれている。当時の洋裁学校の様子を詳細に描けたのは両親のおかげでもある。
母は31年前に亡くなっていて、残念ながら当時の話は、昔、聞いたきり。でも、父が撮っていた8ミリ映像が残っていたんです。当時は珍しかったと思うんですが、新しもの好きな人だったんです。
この映像を見ることで、母が校長をしていた洋裁学校の様子を見ることができました。戦後の貧しい時代、みんなが大八車を引っぱりながらミシンを搬入していく様子とかが。生徒さんたちはきゅーっとウエストをしぼった、ヘップバーンみたいなドレスを着て、本当にキラキラしていました。私はまだ生まれてなかったけど、そこに立ち会えた感覚があって。母の思い出と重ね、書いていてとても楽しかったです。
――ウエディングドレスと聞けば、さぞ華やかで軽やかな美しい話かと思うかもしれないが、本作は、戦中戦後を苦労して生き延びた女性たちへの敬意が込められている。
あの時代の女性たちは本当に苦労してると思うんです。女としておしゃれをする楽しみも奪われ、相手の顔も知らずに嫁にいかされた。でも戦後70年、時代が変わり、女性の生き方も変わり、結婚観も多様化してきましたよね。“ウエディングドレス”は女の生き様の歴史だと思うんです。
――玉岡さんは2年前、「一緒に子供を育てる戦友としての夫婦の形は卒業」と、本誌インタビューで“卒婚”を宣言していた。その後はというと…。