さらに問題なのは「確認取材の際に相手は書き換えがあったと証言したこと」を誤報の原因にしていることである。つまり「相手がウソを言ったのでダマされた」と、これも堂々と書いているのである。
確かに人間はウソをつく。だから記者はダマされないように感覚を磨きウラをとることが必要なのだが、ここでダマされたというのは明らかに現場の朝日新聞社会部記者であろう。
要するに中川社会部長は「うちの教科書問題の担当はジャーナリストの基本中の基本であるウラもとらず、しかもウソつきにまんまとダマされるような記者でした(それが誤報の原因です)」と主張しているのだ。なんと担当の上司がすべてを部下の責任にし、しかもその部下はナマケモノ(ウラを取らない)でアホ(すぐダマされる)な記者だったと貶めているのである。
私は「天下の朝日新聞」が教科書問題担当という重要なポストに、そんな無能な記者を送ったとは到底信じられない。しかしウラを取ったわけではないので、ここは中川社会部長の言うとおりだったとしようか。
もしそうならば、中川社会部長は社会部長として重要なポストにそんな無能な記者を配置したという責任、つまり担当幹部としての責任があるはずだが、そんな文言はどこにもない。「すべては部下の責任、私は関係ない」なのである。史上最低の記事という意味がおわかりだろう。
※週刊ポスト2016年7月8日号