誤報を出してしまった場合マスコミとしてやるべきことは、明確な訂正、迷惑をかけた人間や組織の真摯な謝罪、そしてもう一つある。なぜ誤報を出してしまったかという徹底的な検証である。過ちを繰り返さないためにはそれが絶対必要だということは素人でも理解できるだろう。ところがこの点に関して中川社会部長は次のように書いている。
〈今回問題となった個所については、当該教科書の「原稿本」が入手できなかったこと、関係者への確認取材の際に、相手が「侵略→進出」への書き換えがあったと証言したことなどから、表の一部に間違いを生じてしまいました〉
私が、この「読者と朝日新聞」を日本新聞史上最低の記事と断ずるのは、実はこの部分があるからなのである。といってもジャーナリズムに無縁な素人には非常にわかりにくいだろう。実はその点も問題で、明らかに中川社会部長は「こう書いておけば素人はダマせるだろう」という意識のもとにこれを書いている。また「表の一部に」という表現で問題を矮小化しようとしている。
だがそれ以上の問題は、朝日新聞の現場の記者が、ジャーナリストとしての基本中の基本を守らなかったということを、彼らの上司で監督責任者でもあるはずの社会部長が平気で書いているということなのである。