ところがこの誤報によって日中関係が著しく損なわれた後も、なかなか明確に訂正謝罪しない新聞社が一つあった。朝日新聞社である。朝日新聞の読者というのは失礼ながら、大部分は何があっても朝日は常に正しい「朝日真理教」の信者だと私は思っているが、もちろんそうでない人もいた。他のマスコミはすべて訂正しているのに朝日だけが訂正謝罪しないのはおかしいと思ったのだろう。その件に関して質問の投書をしたのである。
それに対して朝日新聞社を代表して編集幹部のひとりである中川昇三東京社会部長(当時)の長文の記事が一九八二年(昭和57)九月十九日付の朝刊に掲載された。タイトルは「読者と朝日新聞」である。
前にもマスコミ論として書いたことがあるが、私はこれを日本新聞史上最低最悪の記事だと思っている。少なくとも昭和二十年以降はこれが最悪であるということを確信している。しかし、残念なことにはそういう認識がまだまだ少ない。特に朝日新聞の愛読者には、これを良心的で謙虚な記事だと思っている人がまだまだいるようだ。とんでもない誤解だと申し上げたい。
残念ながらこの記事は、古い記事だということだろうか一般向けのデータベースには入っておらず縮刷版で確認するしかないのだが、私の見解を理解していただくために、なぜこれが最低最悪の記事か逐一説明しよう。