「ベルリンの壁の崩壊に匹敵する出来事だった」──『日はまた昇る』の著書で知られるイギリスのジャーナリスト、ビル・エモット氏は、イギリスの国民投票による「EU離脱」を受けてそう指摘した。
安倍首相は10兆円以上の緊急経済対策を視野に入れ、「リスクの波及を懸念しており、市場の安定化に万全を期す」と語った。
イギリスのEU離脱による日本への波及は、「経済的影響」ばかりが指摘されているが、我々は、もっと大きな“変化”に直面しているのかもしれない。それは、「国民投票」という直接的に民意が投じられる手段によって、EU離脱という劇的な選択が実現されたことによる影響だ。
〈国民が意思を示せば、国の政策は根底から変えられる〉
日本国民がこの事実を目の当たりにしたことは、日本の「憲法改正」に少なからぬ影響を与えるのではないか。
歴史を振り返れば、18世紀のフランス革命でも市民が立ち上がってフランスの王政と身分制を中心としたアンシャン・レジーム(旧秩序)が破壊され、それがのちにフランスのみならず西欧全体に民主主義と自由の考え方を伝播させるに至った。
さらに1848年の「フランス2月革命」は運動の主体がブルジョワジーから労働者に移り、国王ルイ・フィリップを追放。「国民が立ち上がれば世界が変わる」ことに気付いたヨーロッパの労働者たちは次々に蜂起して、運動は瞬く間にヨーロッパ各地へ広がり、プロイセン(ドイツ)の3月革命、オーストリア3月革命、ポーランド暴動などを引き起こした。
記憶に新しいところでは、チュニジアで長期独裁していたベン・アリー政権を崩壊させた「ジャスミン革命」(2010年)があるだろう。これもあっという間にリビアやエジプト、イエメンなど周辺諸国に飛び火し、国民が蜂起して騒乱や内戦に至った。
今回のイギリスEU離脱についても、すでにフランスで移民排斥を掲げる極右政党・国民戦線のル・ペン党首が「イギリスの国民投票の結果は『自由の勝利』だ。我々フランス国民にも選択の機会が与えられなければならない」と語っているほか、オランダの極右政党・自由党のヘルト・ウィルダース党首も「オランダでもEU離脱の是非を問う国民投票を」と訴え、ともに一定の支持を集めている。