ライフ

大病院の方が小さい病院より医療費が安くなる例も

大病院のほうが医療費が安くなるケースも

 患者にとって医療費とは、病院の窓口で言われたとおりの金額を払うものであって、「安くする」という発想自体がそもそもない。しかし、実際には国や病院が教えてくれないだけで、医療費を安くする方法はいくらでもある。それを知ることが、無駄なく質の高い医療を受けられる「賢い患者」になるための第一歩なのだ。

 日本の医療・福祉制度の原則は「申告制」だ。つまり、制度を知っていれば得をするのである。病院が教えてくれない医療費のカラクリを見ていこう。

「通院」する場合、大きな病院ほど医療費がかかると思われがちだが、大病院の方が小さな病院より安くなるケースがある。

 糖尿病や高血圧症、不整脈などの生活習慣病では、通院2か月目以降、治療の際に「特定疾患療養管理料」、処方の際に「特定疾患処方管理加算」が加えられる。日本医療事務協会の藤野京子氏が解説する。

「特に『特定疾患療養管理料』は医療機関の規模によって細かく金額が分けられています。その金額は、実は小規模な病院ほど加算される額が多い。19床以下の『診療所』が最も高くなる一方で、200床以上の『大病院』には加算されません」

 そのため、大病院に通院するほど医療費が安くなる。糖尿病で実際にかかる費用を計算すると、「特定疾患療養管理料」が加算される2か月目以降、月2回の通院で大病院の費用(再診料、処方箋料など)が月840円(3割負担の自己負担額・以下同)であるのに対し、診療所は月2620円。大病院のほうが診療所より月額1780円も安いのだ。

 となれば、3か月通院した場合は大きな差が出る。糖尿病で月2回通うケースでは、大病院の場合、1か月目は1470円で、その次の2か月が840円ずつのため合計3150円に。診療所は最初の月は1730円だが、翌月から2620円のため、3か月で合計6970円となるのだ。

 なぜ、大病院の費用のほうが小規模な医療機関より安くなるのか。

「現在の厚生行政では急を要する患者や先進医療を受ける患者は大病院、それ以外の患者は中規模の病院や町の診療所という役割分担を進めています。そのため長期の通院が必要な慢性疾患の患者を中規模病院や診療所が積極的に引き受けるように“インセンティブ”を与えている」(同前)

 行政と医療機関の都合によって患者の負担額が変えられているといえよう。

※週刊ポスト2016年7月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン