ここ15年もの間、家電各社はバカの一つ覚えのごとく「選択と集中」というお題目を唱えてリストラに励んできたが、これは経営のごまかしでしかない。たとえば日立にしても、優良子会社への出資比率を増やして連結子会社にしたり赤字子会社への出資比率を落としたりする順列・組み合わせで帳尻を合わせているだけである。
競争力は国境をまたいで移動する。それが産業の淘汰(とうた)の歴史である。かつて日本はアメリカの家電メーカーを駆逐したが、今は日本が韓国と中国に淘汰されている。安倍晋三首相は「同一労働同一賃金」などと言っているが、家電産業は中国で「同一」の労働をして日本の5分の1の賃金だ。日本の賃金が同じ水準まで落ちて国境を越えた「同一労働同一賃金」にならない限り、じりじりと追い詰められていくだけである。
それが嫌なら、ダイソンのような高価格でも売れる商品を生み出していかねばならない。リストラや選択と集中で対処できる話ではないのである。そういう歴史的視点に立った意思決定をしない限り、日の丸家電メーカーが消滅する日は、そう遠くないだろう。
※週刊ポスト2016年7月15日号