この制度の利用に際して踏まえておきたいのは、費用がひと月単位で計算されることだ。たとえば、Aさん(65)が4週間入院し、医療費の自己負担額が15万円になったケース。入院から退院までひと月に収まっていれば高額療養費制度の対象となり、医療費から限度額8万2430円を引いた6万7570円が返還される。
だが入退院が月をまたぎ、それぞれの月に7万5000円の医療費がかかった場合は各月の医療費がAさんの上限額に達しないため、高額療養費制度は適用されず、15万円すべてが自己負担となる。入院日数と医療費が同じでも、入退院の時期によって6万7570円もの差が生じるのだ。
「椎間板ヘルニアや白内障手術のような緊急性がない入院であれば、主治医と相談して同じ月に入院と退院ができるスケジュールにしたほうがいいでしょう」(藤野氏)
また、病気によっては「特例」が設けられている。週に3~4回の「人工透析」に通う必要がある慢性腎不全など、長期にわたって高額な医療費が必要となる難病には、自己負担額が大幅に軽減される「長期高額療養制度」がある。
「この制度を使えば、血友病とHIV感染症の自己負担は月額1万円になります。より患者の多い、慢性腎不全は、年齢や所得によって自己負担額が異なりますが、それでも1万~2万円です」(同前)
高額療養費制度と同様、加入する健康保険組合などが申請の窓口だ。
※週刊ポスト2016年7月15日号