「今の同級生は、下級生の時に試合に出ていた選手がひとりもいないんです。いくら練習試合といっても、僕が試合に出れば、誰かの出場機会を奪うことになる。僕が出場するより、他の選手が一打席でも経験した方がいいし、一回でも守った方が、チームのためになると思っています」(土井)
試合中は記録員を務めながら、サインを出す野球未経験の川上祐一監督に助言するのも土井の役割だ。彼にとって“4度目の夏”となるが、「少しでも長い夏にしたい」と話していた。
戦力的に62期生は、PL学園史上、最弱のチームだろう。公式戦未勝利の彼らはこれまで一度も、「ああPL 永遠の学園~♪」という高校野球ファンにはお馴染みの校歌を歌っていない。しかし5月に入り、エースの藤村哲平がマウンドに帰ってきて、チーム状況は上向いた。6月29日には、昨秋の大阪大会を制した大商大堺を相手に、「14-14」という大接戦を演じている。
夏の大阪大会1回戦で対決する東大阪大柏原も強敵だ。秋と春の大阪大会でベスト8に進出しており、今のPLからすれば格上である。
6月末に母校を訪れ、62期生に対する指導を行った甲子園通算58勝の中村順司元監督は、部員を次のように激励したという。
「相手がどこであろうが関係ない。校歌をみんなで歌おう」
その思いは、12人の部員も同じだ。