◆大衆迎合や対米追従と違う論理
政治学にポリティカル・アセット、つまり〈総理の貯金〉とでも訳すべき概念があるという。特に第二次政権以降、支持率やアベノミクス効果といった貯金を背景にあえて不人気法案や〈狭き道〉に挑む安倍と、かつて長期政権を実現した中曽根・小泉両首相の〈広き道〉を比べて氏はこう書く。
〈二度の政権交代を経て、「広き道」を選ぶ政治家に対する有権者の不信感が、日本の政治の風景を変えつつあるのではないか〉〈貯金の使い方には人生観が映される。宰相も同じである〉
「北岡伸一・東大名誉教授もまた、安倍さんが祖父岸信介以来途絶えた〈『媚びない政治』を再興しようとしているのではないか〉、〈『媚びる政治家』への国民の本質的な嫌悪〉が追い風になっていると言っている。
僕が本人から聞いたのは、総理であり続けることより、〈何をなすかが重要〉という言葉だけなので、そこに祖父の存在がどう絡むかは知りません。ただ、安泰が目的なら安保法案も原発再稼働もやらなきゃいいし、彼がシリア空爆支持に関してオバマに意地を張ったことも、本書に書くまで誰も知らなかったはず。そこには大衆迎合や対米追従と違う論理があるんだろうし、国を二分する課題に一内閣でこれほど取り組む政権は、歴史的にも稀です」
その情熱や変質の理由を、氏は遅くとも安倍の在任中には質し、公表すると誓う。