半藤:歴史的に常に揉めていた独仏が、これほど密接な関係を築いたことは今までにない。第一次大戦でも第二次大戦でも、ドイツとフランスの対立が大きな引き金になってきたわけですから。

出口:ですから、EUは独仏同盟であって、ここが崩れない限りEUは崩れない。しかし、英国からすると、独仏があまり強く結びついて、大陸が一つにまとまりすぎると、商売でも外交でも、独仏両国を天秤にかけてメリットを得ることが難しくなる。それが英国の伝統的なやり方なんですね。

半藤:大陸とはうまくやりたいが、かといって大陸が強大化、一体化しすぎることには警戒心を抱くわけですね。

出口:それが離脱の背景にあると思います。ただ、今回の件で米国は相当怒っているようです。英国はEUと米国をつなぐバイパスの役割を果たしており、そこに米国にとっての米英同盟の重要性があった。

半藤:米国は英国を通じてEUとつながっていたのが、切れてしまうことになる。

出口:そうなんです。ここでもパワーバランスの問題が起きている。つまり、英米VS独仏という構図があったのが、英国がバイパスになれなくなった。

 米国にとっては、日本と同様、英国の価値が下がっていくのではないでしょうか。

●でぐち・はるあき/1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、日本生命に入社。現在はライフネット生命保険代表取締役会長兼CEO。著書は『「全世界史」講義』I、II『生命保険入門 新版』『直球勝負の会社』など多数。

●はんどう・かずとし/1930年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て作家に。著書に『日本のいちばん長い日』『ノモンハンの夏』『昭和史』『日露戦争史』シリーズなど多数。

※週刊ポスト2016年8月12日号

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