国内

小池都知事 都議会の「ブラックボックス」とどう闘うか

新東京都知事・小池百合子氏(撮影■小倉雄一郎)

 女性初の東京都知事に当選した小池百合子さん(64才)。次点の増田寛也さんに100万票以上の大差をつけての勝利に満面の笑みを見せたが、今後の道のりは決して平坦ではない。彼女を待ち受ける問題は「ブラックボックス」といわれる都議会の改革、増加の一途をたどる待機児童問題など、山積みだ。

 幅広い人脈と巧みな戦略で政界を渡り歩いてきた小池さんは、都議会の「ブラックボックス」とどう渡り合っていくのか──。

 小池さんは、自民党東京都連は“ドン”と呼ばれる大物都議と一部幹部が牛耳っていると指摘している。“ドン”とは自民党の東京都議・内田茂さんのことで、都政は127人の都議会に君臨する内田さんの意向に左右され、改革が容易にできない問題を抱えているとされる。

 小池さんを待ち受ける最初の関門には副知事人事がある。都政では副知事4人が都知事を補佐する仕組みになっている。

「副知事を誰にするかは都議会の議決がなければ決められません。石原慎太郎さんが第一期で当選した時、議員時代の秘書・浜渦武生さんを起用した人事案を提出したが、内田さんを中心とする都議会に否決され続けました。都議会の先制パンチを食らった格好です。結局、石原さんが折れて、内田さんと手打ちしたといわれています」(都政関係者)

 小池さんが自らの側近を送り込もうとしても、すんなりといくわけではないのだ。では、小池さんは、都議会の前に屈してしまうのか? 政治アナリストの伊藤惇夫さんが言う。

「既成勢力を壊していかないと彼女の存在意義がなくなってしまう。かといって真っ正面から対立すると議会が機能しなくなる。自民党と対立しながらも、自民党に籍を残しているのは今後の都政運営を考えてのこと。したたかで、機を見るに敏の彼女なら、うまく渡り合っていくのでは」

 当選後、小池さんは「都議会とも、都民のためになる政策の実現のため連携をとりたい」と語り、一転して融和姿勢も見せた。それは敵は都議会全体ではなく、ただ“ドン”1人――そんな宣戦布告にも思えてくる。

 また、自民党東京都連の指示に反し、小池さんを支持した衆議院議員の若狭勝さんは、こんな期待を寄せる。

「(小池さんが仕掛けた)クールビズもそうでしたが、小池さんは卓越したアイディアを持ち、国際性が豊か。4年後の東京五輪を考えても、都知事として非常に適していると思いますよ。ペット殺処分ゼロや無電柱化も彼女ならではの政策です」

 喫緊の課題は待機児童問題の解消だ。都福祉保健局発表の4月1日時点での待機児童数は2年ぶりに増加に転じ、前年比652人増の8466人。小池さんは保育所の受け入れ年齢の見直しや広さ制限などの規制を見直すとしているが、全産業の平均月給より10万円も安い保育士の待遇改善策については、「給与という形ではなく、空き家をシェアハウスにして直接的な待遇改善を図る」などと主張する。だが、ジャーナリストの猪熊弘子さんはこう指摘する。

「規制緩和はこれまでも行われていて、これ以上人数を詰め込むのは無理です。空き家で“現物支給”というのも人をバカにした政策です。それよりも都がやるべきなのは、認可保育所を増やすことです。定員19名までの小規模保育所は区が認可できますが、それ以上の規模になると都の認可が必要です」

 さらに小池さんは教育について、都独自の給付型奨学金の拡充や英語教育の徹底を訴えてきた。だが、『日本会議の研究』の著者・菅野完さんはこう警戒する。

「小池さんは憲法改正を目指す保守系団体『日本会議』の議員懇談会副幹事長や副会長を歴任してきた人です。日本会議は『親学』を推進しようとしていますが、親学とは伝統的な子育てに回帰するために、まず親を教育すべしという考え方で、発達障害もすべて親に起因するとしている。彼女がこの考え方に傾倒していることは、今後、東京の教育現場に影響が出てくるかもしれません」

 初の女性都知事として小池さんはどんな政策を実現していくのか。大きな期待とともに、厳しいチェックの目も向けていきたい。

撮影■小倉雄一郎

※女性セブン2016年8月18・25日号

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン