ロンドン五輪で28年ぶりの銅メダルを獲得し、リオデジャネイロ五輪では2大会連続となるメダル獲得を目指す女子バレーボール日本代表。主将の木村沙織選手や、21才のセッター宮下遥選手など、充実した戦力が揃う中、実に40年ぶりとなる金メダル獲得に向け、チームを支えるキーパーソンがいる。ミドルブロッカー、今年32才の荒木絵里香選手がその人。2才の娘を持つ母親でもある彼女を、無償の愛で支える女性がいる──。
出産から、あっという間の復活だった。荒木絵里香選手の母、和子さんは穏やかな笑みを浮かべて言った。
「まさか、こんなに早く絵里香がまた五輪に出るなんてね。考えもしませんでした」(和子さん・以下「」内同)
国内トップリーグでプレーし、女子バレーボール日本代表に4年ぶりに復帰、リオ五輪に出場して世界一を目指す。まさに第一線でプレーしながら、幼い娘の子育てをする、無謀にも思える絵里香さんの挑戦を支えるのが母の和子さんだ。
元ラグビー選手で、大学や社会人リーグでもプレーした夫の博和さんと1983年に結婚し、中学の体育教師だった和子さんは退職した。以後、専業主婦として家族をサポート。「絵里香にはいろいろなことをやって、いちばん合うものを選ばせたい」と、幼い頃は水泳や陸上、バレーボールなどさまざまなスポーツをさせた。
「同級生の中でも群を抜いて大きかったですから、大きいというだけでいじめの対象にもなるし、心ない言葉を言われたこともあります。でも、何かで自信をつけられるようになれば、どんなことを言われても強くなっていくのではないか、と思ったんです」
小学5年生から地域のクラブでバレーボールを始めたが、技術はさほど高かったわけではない。それでも小学6年生で180cmを超える身長と将来性を見込まれ、中学に入ると年代ごとの日本代表候補に選出されるなど、バレーボール選手として華やかなキャリアを歩み出した。
高校進学を前に、地元・岡山県内の強豪を選ぶか、県外の学校へ進むか、選択を迫られる中、博和さんの東京転勤が決まった。
それならば、と高校は自主性を重んじ、トレーニングなど体づくりにも力を入れている女子バレーボールの名門、成徳学園高校(現・下北沢成徳高校)を選択。同じ年で、エースの大山加奈選手(アテネ、北京五輪代表)を中心に、絵里香さんも1年時から試合出場を果たし、全国優勝も経験。実績を見ればエリート街道まっしぐら、と思われるのだが、和子さんの見解は違う。