10代で北京大学に飛び級入学し「神童」と呼ばれ、いまや習近平中国国家主席の懐刀である李書磊氏(52)が2015年11月に中国共産党北京市委員会中央規律検査委員会書記に就任して以来、腐敗事件の摘発件数が激増。今年上半期では前年同期のほぼ50%増の1000件あまりに激増していることが分かった。
これは習氏の意を受けた李氏がほぼ1年後に迫った2017年秋の党大会を控え、習氏の権力基盤強化のために、首都・北京で習氏の政治的影響力拡大を図るとの思惑が働いているためとみられる。北京の消息筋が明らかにした。
李氏は14歳で北京大に入学し、24歳で同大大学院博士課程を修了。党の高級幹部を養成する教育機関である中央党校入りし、訓練部主任や教務部主任など同校の要職を歴任。この間、2004年2月から西安市党委副書記を務めるなど地方行政の現場での経験も積み、中央党校に戻ると、中央党校校長に就任した習氏の専属スピーチライターになり、翌年末には副校長に昇格している。李氏は典型的なエリートコースを歩んでいるといえる。
さらに、2013年末には福建省の党宣伝部長に転出したが、2015年に北京に戻り現職に就いた。以来、北京で、習氏が提唱した反腐敗運動を進展させ、逮捕者が急増している。
北京では習氏が最高指導者に就任した2012年末から昨年末まで3000人以上が反腐敗運動で逮捕されているが、李氏が同委書記に就任して半年で、これまでの1年分の1000人が摘発されているほどだ。特に、市高級幹部である部長レベル級幹部は247人に達しており、大物幹部の摘発が際立っている。
とりわけ、江沢民元主席に近いといわれていた呂錫文・北京市副書記が、李氏の同委書記就任直後の今年1月、汚職容疑などで逮捕されており、習氏の意向を受けた李氏が腐敗問題への厳しい姿勢を市幹部らに見せつける狙いがあったとみられる。
『習近平の正体』(小学館刊)の著書で中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は「李氏はここで実績を残すことで、来年秋の党大会で党政治局員に昇格し、北京市トップなどの要職に就任するのはほぼ間違いない。李氏は習氏が深く信頼する数少ない腹心の一人だからだ」と指摘している。