ビジネス

ウナギ味のナマズ 開発者が「必ず儲かる」と言い切る訳

ナマズに続き、ブリの開発も手掛けた有路昌彦教授

 絶滅が危ぶまれるニホンウナギの代わりとして近畿大学が研究開発したウナギ味のナマズ。昨年、25億円をかけて販売を手掛ける会社も設立された。今年に入り格安航空会社のピーチ・アビエーションの機内食に採用されたり、大手流通のイオンでは「土用の丑の日」の目玉商品となった。

 作家の山下柚実氏が、近大発ナマズの開発ストーリーと巧みなビジネス手法に迫った。

 * * *
 新たな研究や技術を使ってビジネスを生み出し世界で勝負するアベノミクス「第3の矢」の柱の一つに「ベンチャーの加速」が掲げられている。大学も例外ではない。今、大学発ベンチャー企業の創出に拍車がかかっている。育成ファンドの規模は1年で2.6倍にも膨らみ、1000億円に達する勢いだ(日本経済新聞2016年1月11日)。

 では、成果はどうだろうか? 例えばミドリムシの大量培養技術で食糧・エネルギー問題に挑戦する(株)ユーグレナは東大発ベンチャーの雄。売り上げも株価も急上昇し、成功事例として熱い視線が注がれている。

 しかしその一方で、苦戦も目立つ。起業しても約半数は黒字化できていない。米国のように短期間でビッグビジネスに成長した大学発ベンチャーは、日本ではいまだ見かけないのが現実だ。

 そもそも教育・研究機関である大学は経営の素人。いくら研究室で新技術が生まれても、儲かるビジネスに育てるのはたやすいことではない。

 そんな中、気を吐く大学がある。志願者数日本一の人気を集める近畿大学が、「近大マグロ」に続く新ビジネスに着手した。数々の大学発ベンチャーの苦戦を尻目に「必ず儲かる」と言い切る大学教授は、その胸にどんなもくろみと勝算を秘めているのか。

「ナマズが空を飛んだ!」

 6月、そんなニュースがお茶の間を賑わせた。格安航空会社ピーチ・アビエーションが機内食の夏メニューとして「近大発うなぎ味のナマズごはん」の提供を始めたのだ。約700食の数量限定だが、「社内でウナギに似ていると評判になり導入を決めた。新しい驚きを与えたかった」とピーチは導入の動機を語る。

 資源枯渇が危惧されるウナギの代わりとなる、「蒲焼き」の提案だ。近大でその開発に力を注いできた中心人物が、同大世界経済研究所の有路昌彦教授(41)。

「ウナギの絶滅危機をうけて、養殖業者や蒲焼き業者から『代わりの魚を探してほしい』と相談されたことがきっかけでした」と動機を振り返る。有路氏は長年養殖魚の研究に携わってきた専門家。依頼を耳にした時、ひらめいた。

「かつて琵琶湖で食べたナマズがうまかった。一番適している、と直感しました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン