もともと味の素は中華メニュー用調味料市場ではトップシェアを誇るが、麻婆豆腐だけは丸美屋の後塵を拝してきた。味の素にとって、麻婆豆腐の売上向上、シェア奪取は至上命題。だが、コンビニなど棚のスペースが限られた店舗ではどうしてもトップシェアの”味の記憶”には及ばないが、例えばカレールゥのようにマーケット自体が拡大すれば、棚作り自体が変わる可能性もある。
実際、ここ数年のレトルト麻婆豆腐市場は、他に類を見ないほど活況を呈している。S&Bは2009年に「麻婆豆腐の素 中辛」、2011年には「李綿記 麻婆豆腐の素」を市場に投入した。この頃から各社が続々と麻婆豆腐市場に参入しはじめる。
2011年にはそれまで「四川麻婆ソース」を輸入していた中華調味料販売の雄、ユウキ食品が瓶詰めの「四川大辛 麻婆豆腐の素」も発売。翌2012年にはカレーの新宿中村屋もこのマーケットに「辛さ、ほとばしる麻婆豆腐」と「コクと旨み、広がる麻婆豆腐」のレトルト2種類で殴りこみをかけた。以来、各メーカーが続々参入し、今年3月には、焼肉のたれなど韓国食品メーカーとして認知されているモランボンが「四川風 麻婆豆腐の素」で麻婆豆腐市場の仲間入りを果たした。
メニュー用調味料市場は、パスタソースなど従来型の商品に加え、野菜サラダ用のシーズニングなど、新ジャンル商品の投入も活発だ。カテゴリーの範囲はまだ明確に定義されていないが、その市場規模は2012~2013年には700億円を突破し、2014年に780億円、そして2015年は800億円規模に。拡大の一途をたどっている。その大黒柱となるのが、中華メニュー用調味料であり、麻婆豆腐。店によっては、メニュー用調味料(合わせ調味料)の棚に実に20種類以上の「麻婆豆腐」をそろえるスーパーもある。
その豆肉の争いは、丸美屋VS味の素という単純化された構図だけでは語ることができない。麻婆豆腐、群雄割拠である。