軽自動車税アップ、行き過ぎた販売合戦による供給過剰、さらには日産自動車と三菱自動車のジョイントベンチャーによる軽自動車4車種について、国交省の燃費審査値が良くなるよう不正なデータ操作が行われていたことや、スズキが燃費審査のためのデータ測定を法規通りにやっていなかったことが露見するなど、軽自動車のイメージは少なからず悪化した。
そこを突くようにトヨタ自動車が、100%子会社化したダイハツに作らせたコンパクトカー『パッソ』で「軽じゃないK PASSO」という謳い文句を掲げて軽自動車のシェアを奪いにかかっている。
もちろん軽自動車とリッターカーでは維持費がまったく異なるので、軽ユーザーを簡単に奪うことはできないだろう。が、携帯電話普及の黎明期もそうだったのだが、トヨタがこういう戦術を取る時は税制や規制が不公平であることをアピールする狙いがあることが多く、今後、軽自動車の税金は1万800円でも安すぎると言いはじめる可能性はある。
本来ならコンパクトの税金が高すぎると言ってもいいはずなのだが、そうすると利幅の大きな上級車の需要をコンパクトが食ってしまう可能性があるので、そうは言わないのだ。
このように、税制を含めて軽自動車の置かれる立場はますます厳しくなっていくものと考えられるが、需要を減らさないためのトレンドは軽自動車業界だけの取り組みでは無理だ。軽自動車のメイン市場である地方の衰退と都市部への一極集中の流れを止めなければならないからだ。
では、国内専用モデルが多く、コストが意外に高い軽自動車は今後、生き残ることはできるのだろうか。
まず軽自動車税をはじめとする維持費を現在の水準でとどめることは絶対条件。そのうえで、小ささを逆手に取るような、遊び心と実用性を兼ね備えた低価格なモデルを粘り強く作っていくしかない。
それでも市場を維持できなくなるようなことになれば、そのあかつきには営利企業として軽自動車事業の縮小、撤退を考えるところも出てくるだろう。
トヨタがダイハツをトヨタ車体やトヨタ自動車東日本と同じような100%子会社にしたのを見てもわかるように、軽自動車メーカーにとっては、今がまさに今後の身の振り方を考えるべき時期なのである。